回 答 書
2022年11月07日

当連絡会「9月16日付「声明」に対する世界平和統一家庭連合からの
抗議及び撤回要求に対する「回答書」

◆全国弁連コメント
 「当会は、令和4年9月16日に発出した声明で、世界平和統一家庭連合(以下「家庭連合」という。)に対し、同声明の趣旨1項(1)ないし(4)の内容を求めました(その詳細は同声明、あるいは今回の当会からの回答書の末尾にも記載があります)。

 これに対し家庭連合はその求めに正面から答えず、当会の声明の内容について事実無根の決めつけであるなどとして、その撤回を要求してきましたので、これに対する当会の回答と併せて掲載します。

 当会の回答にある通り、家庭連合の主張はいずれも理由の無い、無理に責任を回避しようとするものに過ぎません。
当会は回答の最後に、9月16日声明で求めた内容について、改めて本年11月21日までに回答するよう求めていますので、回答があった場合には改めて掲載します。」
 
 
令和4年11月7日 
 宗教法人 世界平和統一家庭連合
 会長 田中富廣 殿
 総務局長 澤田 拓也 殿 
 (03-3467-3186)
 全国霊感商法対策弁護士連絡会  
代表世話人 弁護士 郷路征記(札幌)
代表世話人 弁護士 中村周而(新潟)
代表世話人 弁護士 河田英正(岡山)
代表世話人 弁護士 平岩敬一(横浜)
代表世話人 弁護士 山口 広(東京)
(連絡先)東京都港区西新橋3丁目15番12号 
西新橋JKビル6階 
田村町総合法律事務所 
電 話 03-3431-4488 
FAX 03-3431-4481 
同連絡会事務局長 
弁護士 川井康雄 

回 答 書

前略 
 当連絡会は、貴法人からの本年10月14日付「9月16日付「声明」に対する抗議及び撤回要求」(以下「本件抗議文」といい、当連絡会の9月16日付声明を「本件声明」といいます。)に対し、以下の通り回答します。

1 同1項「声明の要求」について

 本件声明で指摘した通り、貴法人の①伝道・教化活動②献金・物品購入に対する勧誘活動③合同結婚式への勧誘については、いずれも違法とする判決が確定しています。この点は何ら「曲解」でも「拡大解釈」でもありません。

 なお、原告側が敗訴した判決もあることは事実ですが、以下述べる通り、それらの判決は、違法であると判断された規範に対する事実の立証(具体的な勧誘文言や損害額など)が不足した結果のものに過ぎず、貴法人が長年に亘り行ってきた正体を隠した伝道活動が違法であることや、目的・手段・結果の観点から社会的相当性を欠いた献金勧誘行為・物品購入勧誘行為が違法であるとの点は確立した判断です。

 なお、当連絡会としては、信者として被害を受け続けた期間が長ければ長いほど、(その分被害は大きくなりがちであるのに)、入信時からの古い記憶が薄れてしまったり資料が散逸して揃わなかったりして立証が困難になり易いという構造自体にも問題を感じています。特に、損害額の立証については、貴法人が過去の献金実績等の資料の開示を拒んでいることが大きく影響しています。

 今後の献金等について領収証を交付するようにすべきであることは勿論ですが、貴法人の交渉、訴訟対応として、過去の被害についても、献金記録の開示を積極的に行うよう改善されるべきと考えます。


(1)同(1)について

 「『合同結婚式について、裁判上、『違法』と判断されたことはない」との指摘は誤りです。
 合同結婚式への勧誘が違法とされた裁判例については当連絡会ホームページの12番(平成14年8月21日東京地裁判決及びその上級審。お手元にあると思いますが必要であればいつでも写しをお送りします。)をご確認ください。そこでは、伝道教化の過程とあわせて、合同結婚式に至る過程についても詳細に事実認定がなされた上で「自己の罪を強く意識させられ、救いを求める心情をかきたてられた上、その教化プログラムの中で(中略)合同結婚式が、アダムとエバから受け継いだ原罪から解放される唯一の方法であり、合同結婚式に参加しなければ自己や先祖の救いがない旨教えられ、信じさせられていたもの」で「原告らに対する合同結婚式への参加に向けられた各行為には、原告らの婚姻の自由を侵害する違法がある」と判断されています(上記一審判決の172~175頁)。

 また、合同結婚式について婚姻意思を欠き無効とした裁判について、当連絡会は「多くが国際結婚であり、被告である結婚の相手方(外国人)が全く裁判で争わなかったため、個々の婚姻手続きが『無効』との原告の主張が何らの反論もなく、一方的に認められた場合が多い」という認識を有してはいません。

 貴法人の上記主張は外国人である相手方が出廷もしないようなケースを想定したものかと思われますが、家事事件については一方当事者が欠席したからといって簡単に離婚が認められるものではなく職権での事実調査等(人事訴訟法20条)も踏まえて婚姻意思の有無が判断されるのであり、貴法人の主張は失当です。また、「全く裁判で争わなかった」ケースというのは、相手方においても実質的な婚姻意思が無いことを否定できないと考えていたからに他ならないと思われます。


(2)同(2)について

 貴法人が霊感商法、物品販売を行ったことがないという主張は明らかな責任逃れの主張であり、到底看過できません。
 当連絡会は、民事で販売勧誘行為が違法とされた販売会社、刑事摘発を受けた販売会社のいずれも、貴法人と実質的に同一の組織であると考えています。

 また、当連絡会は、貴法人が、2007年~2010年の刑事摘発後、販売会社での物品販売やその顧客に対する伝道・献金勧誘の代わりに、既存信者に対して厳しい献金ノルマを課すと共に、天聖経や天福函等を授与するとの名目で高額献金を支払わせている点について、金銭を収奪する団体としての本質は現在も変わっていない、と指摘しているのです。


(3)同(3)について

 違法な献金勧誘が「一部信者らの」「行き過ぎ」であるとの貴法人の主張は責任逃れの不当なものです。

また、上記の通り、敗訴になった判決は、違法であると判断された規範に対する事実の立証(具体的な勧誘文言や損害額など)が不足したものに過ぎず、目的・手段・結果の観点から社会的相当性を欠いた献金勧誘行為・物品購入勧誘行為が違法であるとの基準そのものが否定されたわけではないと考えられます。

 なお、相互に噛み合った反論を行う必要がありますので、判決を指摘する場合には、「○○地裁○年」だけでなく、年月日や掲載誌等できちんと特定するようにして下さい。同指摘の3つの判決については写しをお送りください。


(4)同(4)について

 これも上記の通り、敗訴となった判決は、違法であると判断された規範に対する事実の立証(伝道教化課程に関する証拠類)が不足したものに過ぎず、正体を隠した伝道活動が違法であるとの基準そのものが否定されたわけではないと考えられます。なお、御指摘の東京地裁平成26年4月22日判決、岡山地裁平成5年判決についてはこちらの手元にありませんので当連絡会に判決文の写しをお送りください。判決内容を確認後、個別に反論をしたいと思います。


(5)同(5)について

 ビデオセンターが「信者らによる任意の受講施設」であるとの主張はやはり責任逃れの不当なものです。また、2015年の名称変更を契機としてビデオセンターが一切無くなったとの点は事実ではありません。少なくとも2019年に、新宿付近での偽装勧誘員がSMC(杉並ミッションセンター)なるビデオセンターへ勧誘をしていた事実が報告されています。

 また、貴法人が、コンプライアンス宣言や教会改革と称して、正体隠しの伝道や過大な献金勧誘をしないように求めるようになったのは、正体を隠した伝道活動が違法であることや、目的・手段・結果の観点から社会的相当性を欠いた献金勧誘行為・物品購入勧誘行為が違法であることを受け入れたものに他なりません。

 なお、当連絡会は、少なくともごく最近まで、貴法人による正体隠しの伝道活動が続いていたことを確認しています。例えば、2019年8月のテレビ報道でも貴法人の名称を隠した路上での伝道活動が行われていたことが報じられています。


2 同2項について

(1)第1段落ないし第4段落について(「貴連絡会は、当法人」~「明確な定義はない。」)

 当連絡会は、社会が二世問題に向き合い適切な対策が講じられていれば、山上容疑者の事件が起きなかった可能性があること、二世問題が同事件の原因の1つになっていることは重ねて指摘していますが、「すべての責任を」貴法人に帰するとしたり、山上容疑者の「蛮行を容認」したりしたことは全くありません。

 もっとも、当連絡会は、貴法人がこれまで繰り返し違法な伝道活動や違法な献金勧誘等を繰り返してきた団体であること、そうした行為が反社会的で許されないものであることを指摘しているのであって、貴法人やその信者に対するレッテル貼りをしようとするものでは全くありません。

 当連絡会は、本年7月12日付声明の最後に、「今回の事件や報道、SNS等の投稿によって、傷つき、苦しむ統一協会の現役信者、特に二世信者、三世信者が存在することを念頭に置き、取材、報道、投稿は慎重にされることを望みます」としており、貴法人の信者が差別的扱いを受けることについて懸念の声を表明しています。

(2)第5段落(「貴連絡会は「声明」において」~)以降について

 当連絡会が本件声明で「第2、第3の山上容疑者を出さないために」と表現しているのは、二世信者が信仰の強制や経済的な困窮等、様々な苦境に立たされた結果、その大きく溜まった不満・憎悪等の感情から、何らかの問題行為に走る可能性があることを指摘するものであり、そうした問題が生じないように対策を講じるべきでるのは当然のことです。

 また、貴法人に限らず、違法な伝道活動や違法な献金勧誘等を繰り返してきた団体に対し、国民の信教の自由や財産権の侵害を防ぐ上で教育を行うこともまた、当然のことと思いますし、そうした問題行為に着目してその対策を講じることは、何ら「特定宗教の弾圧」ではありません。

3 最後に

(1)以上から、当連絡会の本年9月16日付の声明文に対する貴法人の抗議は理由が無いものですし、撤回をするつもりは一切ありません。

 当連絡会は、上記声明文を貴法人に対し郵送及びFAXし、同声明の趣旨1項に記載の要求を受け入れるのかどうかを10月7日までに回答するよう求めました。

 改めて、同声明で貴法人に求めた内容を以下に引用します。

 「(1) 今後の伝道活動においては、被勧誘者に対し、予め、勧誘の主体が旧統一協会であること、及び、勧誘目的が宗教団体への伝道であることを明らかにし、また、文鮮明をメシアと信じさせるまでに、入信後の献金及び伝道など宗教的実践活動の中核部分を明らかにし、被勧誘者の信教の自由、信仰選択の自由を侵害しないようにせよ。
(2)信者や信者であった者への勧誘経緯、従前の献金及び物品購入代金名下に支払わせた金額を全て調査し、当該信者を正体隠しの伝道により信者とした場合、及び先祖の因縁等で不安を殊更煽って献金をさせたり、当該信者の経済状態や生活状況からして過大な支出をさせたりしたことが明らかになった場合には、当該信者または信者であった者に真摯に謝罪し、損害の一切を賠償せよ。
(3)今後、信者から献金その他名目を問わず金銭を受領する場合には、出捐者、及び、金員の受領主体、目的、金額を明記した領収書を交付し、併せて、その一切を記録して会計・財務資料として保管し、献金をした者からの要求があった場合にはその記録を開示せよ。
(4)信者に対し、こどもへの信仰継承を行う際は、我が国が批准している子どもの権利条約第14条2項に基づき、「児童に対しその発達しつつある能力に適合する方法」によるよう指導せよ。」

 本件抗議文では「抗議する意味で回答する」とされ(同書面柱書)、上記要求に対しどこまで応じるのか明らかではありませんが、貴法人の「教会改革」では、(1)については「家庭連合」名を明らかにする限度で受け入れ、(2)の調査については受け入れず、(3)については収入の10分の3以上の献金の場合に限り受け入れ、(4)については受け入れない、ということかと思われます。
 あくまでも、(2)(4)については受け入れないという回答であるのか、改めて、本年11月21日までにご回答下さい。(1)(3)についても、当連絡会の理解に誤りがある場合には併せてご回答下さい。

 (2)なお、本件声明の送付の際にもお伝えしている通り、当連絡会は貴法人と面談し、協議に応じる用意がありますので、希望される場合にはその旨ご連絡下さい。
草々