声明 世界平和女性連合の女子留学生日本語弁論大会について
2023年6月15日

全国の各自治体の皆様へ


 全国霊感商法対策弁護士連絡会
代表世話人 弁護士 平岩敬一(横浜)
代表世話人 弁護士 郷路征記(札幌)
代表世話人 弁護士 中村周而(新潟)
代表世話人 弁護士 河田英正(岡山)
代表世話人 弁護士 山口 広(東京)
事務局長 弁護士 川井康雄(東京)
 第1 声明の趣旨

 
  旧統一教会のダミー団体である世界平和女性連合は、本年6月10日から7月29日にかけ、「2023WFWP留学生日本語弁論大会」なるイベントを全国各地で相次いで開催予定としているところ、同イベントに会場の使用許可をしないようにして頂きたい。 

 
  今後とも、旧統一教会のダミー団体について注視し、同団体に施設の利用を許可することがないようにして頂きたい。 

 
 第2 声明の理由

 
  旧統一教会の反社会性についてと正体隠しの活動

 
     (1)  昨年7月来の報道や被害者、元信者や元二世信者による発信により、世界平和統一家庭連合(以下「旧統一教会」という。)が霊感商法、高額献金などによる金銭被害に止まらず、家族が信者になったことによる家庭破壊、親が信者であった二世が受けた人権侵害などの被害を生み出し続けていることが明らかとなり、これを受け、文化庁宗務課が旧統一教会に対する宗教法人法に基づく解散命令に向け、質問権の行使を含め裁判所への申立てに向けて動いている現状にある。

     (2)  旧統一教会が、一般市民に対し、印鑑、念珠(数珠)、石板、壺、多宝塔、釈迦塔、人参濃縮液などを先祖の因縁を解放するためなどと欺罔し、畏怖・困惑させて、不当に高い価格で売り付けたり、多額の献金・貸付を強要したりする、いわゆる霊感商法や高額献金等による被害は、当連絡会が集計した被害者の相談だけでも、同封の資料第1のとおり1987(昭和62)年から2021(令和3年)年12月までの35年間に合計3万4537件、被害合計は約1237億円にのぼっており、現在もなお同様の被害相談が当連絡会だけではなく、全国の法テラスや全国統一教会被害対策弁護団にも寄せられている。これらの相談は氷山の一角であり、被害全体はさらに甚大な規模となるものである。

     (3)  旧統一教会は、「真(まこと)のメシヤ」であるとする文鮮明の指示により、「万物復帰」という教義の実践として、日本人信者に対し、強烈な資金集めとなる献金を、毎月目標額(ノルマ)を示して、その達成のための活動を継続させてきた。こうしたいわゆる霊感商法については強い社会的批判があり、再三にわたって献金や物品販売活動、ひいてはその信者勧誘活動についてまで、裁判所において旧統一教会の法的責任が認められてきたにもかかわらず、今でも旧統一教会による違法な手口による資金集めや信者勧誘活動は続いている。全ての日本人信者が、再臨のメシヤとあおぐ文鮮明やその後継者である韓鶴子(ハン・ハクチャ)が、日本の組織に「いつまでにいくらを献金しろ」という過大な指示を出し続けるため、違法な手口による資金集めの活動を止めることができないのが実態である。違法な手口による資金集めの活動による被害は現在もなお続いており、全国各地から被害報告が届いている。

    (4)   旧統一教会の法的責任が認められた判決は少なくとも30件以上あり、これらによって、旧統一教会の伝道活動や資金獲得活動で用いられる手口が違法であることは、すでに確立された判断であるといえる。

 さらに、こうした旧統一教会信者の行う違法な行為については特に2007年から2010年にかけ、各地で刑事上の捜査、摘発がなされ、有罪判決が下されるに至っている。


     (5)  こうした旧統一教会の手口は、過去幾度かに亘り、マスコミの報道、裁判所の判決等により広く知られるようになり、旧統一教会にとって従来の手口の霊感商法による資金集めは困難になってきた。

 そこで、旧統一教会はその正体を隠して、資産を有する高齢者、未亡人、主婦等に近づき、ビデオセンター(文化フォーラム)に通わせ、時間をかけて説得して献金を強要する外、その所有する不動産を担保に借金をさせて旧統一教会組織に提供させたり、銀行、サラ金から借金をさせたりしており、その種被害相談例が後を絶たない。

   2  世界平和女性連合について 

          世界平和女性連合は、上記のような被害者を獲得するための旧統一教会の「かくれみの」的団体の一つである。京都地判平成14年10月25日は、世界平和女性連合が旧統一教会とは「実質的にも別個の団体であるといえるかは疑問がある」と判示している。なお、旧統一教会の関連団体のリストは当連絡会のホームページ上でも掲載している。

 世界平和女性連合は、旧統一教会の教祖文鮮明が女性信者の獲得と旧統一教会の資金獲得、社会的政治的な影響力の拡大のために信者に指示して組織させたもので、その総裁は韓鶴子(文鮮明の妻)であった。同連合の規約第3条(目的)を見ても、同連合が文鮮明の提唱する理念を拡大し、実現するための団体であることは明白であり、その理念の中には、霊感商法を実行せざるを得ない「万物復帰」の教義が組み込まれている。日本の世界平和女性連合の会長は、かつて、旧統一教会元会長であった江利川安栄が務めており、また、その事務局メンバーは旧統一教会信者であり、運営も旧統一教会信者によってなされているのである。

 世界平和女性連合は、海外では主に発展途上国での国際協力活動、国内では海外支援のためのチャリティーイベントや啓蒙のための勉強会・セミナー等を行っていると宣伝している。しかし、これは表向きの活動に過ぎず、実情は、旧統一教会の別働隊として、旧統一教会の正体を隠して女性を伝道し、資金集めのターゲット獲得の窓口となり、また文鮮明の提唱する各種活動への動員の窓口となっている。多数の女性が、その正体が旧統一教会であることを隠されたままで、世界平和女性連合に誘われ、その活動に従事させられている。世界平和女性連合は、ボランティア組織を仮装した旧統一教会の資金集め、人集めのための団体なのである。現に、近年信者に配布されていた「統一運動を推進する統一グループ」と題する旧統一教会の内部資料でも、世界平和女性連合は「宗教の統一」「統一原理による全人類の救済」の項目に記載されている。

 このような世界平和女性連合の問題点はこれまでもつとに指摘され、マスコミ等でも扱われているところであり、世界平和女性連合がボランティア組織を仮装した旧統一教会の資金集め、人集めのための団体であることは明白な事実である。

 この点、昨年11月には、世界平和女性連合の派遣員が運営していたモザンビークの学校において、旧統一教会の布教を強く意識した学校活動が実施されていたとして外務大臣表彰が取り消されている(なお、東京地判平成14年8月21日では、中央アフリカに派遣された元信者が同国の大臣クラスの女性を世界平和女性連合に勧誘する活動に従事した、と認定されている。)。また、本年2月には、奈良県において、世界平和女性連合が手芸サークルの活動であると称して布教活動を行い、利用団体としても別名称を用いて活動をしていたことが報じられており、世界平和女性連合が現在でも正体隠しの活動をしていることが明らかとなっている。


   3  施設利用をさせることの問題点 

    (1)   前記の通り、旧統一協会は現在、文化庁宗務課による質問権行使を受けており、宗教法人法の解散請求事由の1つである、「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと」の疑いがあるものといえる(宗教法人法81条1項1号、78条の2、1項)。

 このことは、関連団体である世界平和女性連合についても同様であるところ、地方自治体は、その施設をその利用させることによって、他の基本的人権が侵害され、公共の福祉が損なわれる危険がある場合には、施設の利用を拒否できるものと解される(地方自治法244条、泉佐野市民会館事件(最判平成7年3月7日))。

    (2)   当連絡会としては、女子留学生日本語弁論大会への参加を端緒として、あるいはそれ以外の正体隠しの伝道活動により、旧統一教会による勧誘と知らされないまま近づかれ、資産を奪われ人生を狂わされる市民や学生が出ることを深刻に憂慮している。

 そこで、世界平和女性連合をはじめとする旧統一教会のダミー団体の動向を注視し、同団体に対し施設の利用許可をすることの無いようにして頂きたい。

   全国の自治体議長宛てに提出されている陳情について

          なお、当連絡会が本年3月18日付けで出した「政治家の皆様へ 統一教会との関係断絶を求める声明」に対して、5月以降、全国の自治体の議長宛てに、「信教の自由を守る○○県民の会」などの名義で「全国霊感商法対策弁護士連絡会の不当な声明に対する陳情」なるものが提出され、旧統一教会との関係断絶等の決議を行わないよう求めているようである。

 しかし、同陳情で指摘されている「憲法違反」なるものは全くあたらない。
当連絡会は、全国の自治体・政治家の皆様に改めて旧統一教会との関係断絶を強くお願いしたい。


  以上