声  明
2022年7月20日

世界平和統一家庭連合の7月17日付け声明文に対する再反論

全国霊感商法対策弁護士連絡会
代表世話人 弁護士 郷路征記(札幌)
代表世話人 弁護士 中村周而(新潟)
代表世話人 弁護士 河田英正(岡山)
 代表世話人 弁護士 平岩敬一(横浜)
代表世話人 弁護士 山口 広(東京)
 事務局長 弁護士 川井康雄
  
当会は、安倍晋三元首相を死に至らしめた山上被疑者の行為がいかなる理由があろうとも決して許されないものであることを改めて表明するとともに、安倍元首相のご冥福を改めて心よりお祈り申し上げます。
今般、世界平和統一家庭連合(旧名称世界基督教統一神霊協会、略称統一協会。以下「家庭連合」といいます。)は、当会が7月12日に行った記者会見を受け、同月17日付け声明文を発表しました。
しかし、上記声明文は、余りにも事実を歪曲したものです。当会としては、正しい事実を伝えるべく、ここに再反論の声明を発表いたします。
 
上記声明文では、家庭連合は、「魂の救済を本旨とする宗教団体の立場からは、山上家庭を襲った悲劇に対しては哀憐の情を禁ずることができません。」「結果として山上家庭にこのような悲劇が起きてしまったとするならば、山上家庭の救済と幸福をもたらす上において、当法人が十分に支えきれなかったことを率直に認めざるを得ません。」などとしています。
しかし、家庭連合の違法な伝道・教化活動及び自己破産させるほど情け容赦なく献金させる「献金運動」のため多数の家庭が崩壊に追い込まれてきたのは歴史的事実です。山上被疑者の動機に関する報道が事実であるとするならば、「山上家庭を襲った悲劇」は家庭連合が引き起こしたものであることは明らかであり、それにもかかわらずまるで他人事のように「綺麗事」を述べるのは、余りにも無責任です。
 
家庭連合は、「あたかも同事件が当法人の活動が原因で起こったかの主張を繰り広げ、事件との関連のない当法人についての様々な見解を述べていることに対しては、強く抗議いたします。」としています。
しかし、上記のとおり、山上被疑者の動機に関する報道が事実であるとするならば、家庭連合が信者にした母親をして、一家を経済的に破滅させるに足りる献金をさせたこと、そしてそれが今回の事件の重大な要因となっていることは明らかであり、「事件との関連のない」との弁明は余りにも無責任です。なお、安倍元首相がビデオメッセージを送ったUPFは家庭連合のダミー団体であり家庭連合との関連性が明らかです。この点、家庭連合の代理人は、裁判所に提出した書面において、安倍元首相がメッセージを送った2021年9月12日開催の「シンクタンク2022」第2回会合の前の、同年5月9日に開催された「シンクタンク2022」発足式については、「世界平和統一家庭連合及びUPF(天宙平和連合)の共催」と主張しています。このことからしても、UPFが家庭連合とは別の団体であるとの弁明は責任を回避するための詭弁としか考えられません。
 
家庭連合は、「そもそもこのコンプライアンス宣言とは、過去において一部の教会員の行き過ぎた活動が違法行為とされ、それを十分指導・監督できなかった教団の使用者責任が問われたケースがいくつかあったため、教会員が法令を遵守し、公序良俗に反する行いが無いように、教団が責任をもって指導することを宣言したもの」であるとしています。
しかし、家庭連合の違法行為は、単に「一部の教会員の行き過ぎた活動」により行われたものではありません。長年にわたり「組織として」展開されてきたものです。家庭連合の使用者責任を認める判決は平成6年(1994年)以降多数積み上げられていますが、それに留まらず、家庭連合の活動自体が「組織的な不法行為」であると断じて法人固有の不法行為責任まで認める判決が出ています(東京地判平成28年1月13日消費者法ニュース107号329頁。東京高裁平成28年6月28日消費者法ニュース109号200頁で維持)。
また、「コンプライアンス宣言」としていますが、家庭連合は外部に対して透明性のない団体ですから、当会は家庭連合の違法な活動が廃止された事実を確認できておりません。現に、2009年以降にも違法な献金勧誘行為があったことが複数の判決で明らかになっています。
加えて、家庭連合は、実際、これまで2009年以前の過去の被害に対する誠実な賠償や謝罪を何ら行っておらず、裁判では、正体を隠した伝道活動や自己破産させるような献金勧誘行為も、信者の自発的な行為と主張し続けています。「コンプライアンス」というのであれば、未来についてだけでなく、過去の活動に対しても真摯に向かい合い、違法であった点を反省すべきなのであり、この点からも、家庭連合がコンプライアンスを遵守しているとは到底評価できません。
    
家庭連合は、「過去において純粋な信仰に基づいて自主的に献金を捧げた信徒が、その後心変わりして献金の返還を求めるといったケースがあり」、「そうしたケースについては、当法人は誠意をもって対処し、解決に向けて取り組んでおり、またそのように指導しております。」としています。
しかし、家庭連合による伝道・教化活動は、旧統一協会・宗教であることを告げないまま教義(統一原理)を教え込む「正体隠しの勧誘」を行い、最重要な情報の非開示・虚偽の事実を告げる欺罔・因縁への恐怖を用いての脅迫・使命感や罪意識に訴える等の心理的圧迫を用いて行う違法なものであり、被勧誘者の信教の自由に対する「重大な脅威」と評価すべき(札幌地判平成13年6月29日判例タイムズ1121号202頁)ものです。家庭連合は、被勧誘者をそのような心理状態にした上で、最初のできるだけ多額の献金をさせる際には、献金をしなければ因縁によって家族にさらなる不幸が見舞うと告げて畏怖・困惑させて献金させるのであり、決して「純粋な信仰に基づいて自主的に献金を捧げ」るのではありません。
また、家庭連合は、元信者からの請求に対して争うばかりか、近年は献金の返還請求はできないと信じている信者に対して、将来、その返還請求をしない旨の「合意書」にまで署名押印させ、後から返金請求させないようにするとの対策を組織的に講じているのであり、到底、「誠意をもって対処し、解決に向けて取り組んで」いるとは言えません(上記のような合意書を公序良俗違反で無効と判断したものとして東京地判令和2年2月28日、東京高判令和2年12月3日、最決令和3年9月28日)。
   
 6  家庭連合は、「連絡会所属弁護士が中心となってまとめた日弁連の「実態調査集計結果」等は、弁護士や消費生活センターに相談のあった当法人にまつわる案件全てを「被害」と断定しており、その集計内容は不正確であり、水増しされています。そして、これは、当法人に対して裁判を訴える側の偏った情報でしかありません。」としています。
しかし、そもそも上記集計は日弁連のものではなく、また、当会は当然のことながら水増しなどしていません。脱会した方全てが被害の声を上げるわけでないことから考えても、集計結果は氷山の一角であり(最近のニュースで、韓国人の元教会長が、毎年550~600億円前後が日本統一協会から韓国統一協会に送金されていたと述べていたことが報じられています。)、実際の被害は集計額よりもはるかに多いことは明らかというべきです。
   
 7  家庭連合は、「当法人信者はかつて、拉致監禁・脱会強要という違法な人権侵害の被害に遭って来ました。」「中には拉致監禁、強制改宗の現場にも赴き、不法な事実を目撃しても目をつぶったりして、加害者側の訴訟の代理人となり金銭上の利益も得てきたのです。」としています。
しかし、これはあたかも家庭連合側が被害者であるかのように装い、家庭連合の違法な活動を糊塗するためのプロパガンダともいうべき主張です。確かに、入信してしまった家族を何とかして取り戻したいとの思いから、一部に行き過ぎた行為があり、その責任が認められた例はありますが、家庭連合側が主張するような事実が広く行われていたり、当会所属弁護士がそれに加担し金銭上の利益を得ていたりという事実は一切ありません。
   
 8 家庭連合は、当会所属弁護士の発言について「安倍元総理に対するテロ行為の正当化を示唆するような極端な主張を展開しています」としています。
しかしながら冒頭に記載したとおり、山上被疑者の行為はいかなる理由があろうとも正当化されないものであり、当会はいかなる暴力にもヘイトクライムにも反対するものです。なお、当該発言をした郷路征記弁護士の声明は別紙のとおりです
   
  2022年7月17日 世界平和統一家庭連合 メディア報道に関する声明文はこちら→