◆グローバルビューティー玉置祥子損害賠償判決文
(東京地裁 平成19年5月29日判決)

判決文要約

平成19年5月29日判決言渡
 東京地方裁判所平成16年(ワ)第27265号 損害賠償請求事件
 口頭弁論終結日 平成19年2月20日

主 文

(1)被告世界基督教統一神霊協会は、原告に対し、4438万2763円及びこれに対する平成17年1月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

 
(2)被告株式会社グローバルビューティーは、原告に対し、被告世界基督教統一神霊協会、被告玉置祥子、被告●及び被告●と連帯して、174万円及びこれに対する平成17年1月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

 
(3)被告玉置祥子は、原告に対し、被告世界基督教統一神霊協会及び被告●と連帯して、1750万2763円及びこれに対する平成17年1月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

 
(4)被告●は、原告に対し、被告世界基督教統一神霊協会及び被告玉置祥子と連帯して、1750万2763円及びこれに対する平成17年2月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

 
(5)被告●は、原告に対し、被告世界基督教統一神霊協会、被告玉置祥子及び被告●と連帯して、456万2730円及びこれに対する平成17年1月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

 
(6)被告●は、原告に対し、被告世界基督教統一神霊協会、被告株式会社グローバルビューティー、被告玉置祥子及び被告●と連帯して、1219万円及びこれに対する平成17年1月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

2 原告のその余の請求を棄却する。

3 訴訟費用はこれを100分し、その23を原告の負担とし、その36を被告世界基督教統一神霊協会の負担とし、その1を被告株式会社グローバルビューティーの負担とし、その14を被告玉置祥子の負担とし、その14を被告●の負担とし、その3を被告●の負担とし、その余を被告●の負担とする。

4 この判決は、1項(1)から(6)に限り、仮に執行することができる。


事実
事案の概要(要約)
(1)原告は、1983(昭和58)年7月ころ、統一協会の信者に自宅を訪問され、手相や姓名判断を無料で行うとの名目で自宅に上がり込まれ、原告の実家の先祖は武士で殺した人間の恨みを負っており、これにより原告の父母や兄弟が早死にしているなどと恐怖を煽られ、因縁から守られるための傘として印鑑3本を購入させられた。

   これを契機として、原告は同年、ビデオセンターを通じて統一協会に入信させられ、以後、2003(平成15)年7月頃に脱会するまでの約20年間の間、献金を中心に、4000万円以上の金員を統一協会に騙し取られた。

(2)原告は入信後、熊本韓日人教会、熊本中央教会、熊本西教会、清心教会(株式会社グローバルビューティー)と所属を移り、各教会で、各種献金被害を被った。
原告が請求した財産上の損害の内訳は以下のとおりである。
  
 物品購入代金名下の損害    253万円
  
 献金名下の損害     3438万0260円
(祝福献金、総生蓄献金、聖本献金、愛天愛国献金、先祖解怨献金、飛行機献金、お母様来日献金、祖国光復献金、聖酒式祝福献金等)
  
 債務負担名下の損害  378万2763円
  
 合計            4069万3023円

(以下略)

理由(抄)
・被告グローバルの性格について
被告グローバルは、その代表者は被告統一協会の信者であり、被告統一協会が取り扱うべき文書について取り扱いを行っていて、ミドリの会、ムラサキの会などの名義による口座を持ち、被告統一協会に対する献金を受け付けているほか、被告統一協会の教義についての勉強会を行うなど、被告統一協会の教義に基づいた、あるいはその実践活動などを行っている。

これらの事実に、被告グローバルの清平行きのツアーの案内及び行程表においては被告グローバルは、「清心教会」と表記され、被告玉置がその筆頭とされていること、原告や他の被告統一協会の信者においてもその様に認識していることなどに照らせば、被告グローバルが、被告統一協会の下部教会である清心教会としての活動を行っており、被告玉置がその代表の立場にあったことが認められる。

被告グローバルらは、被告グローバルと、被告統一協会とは全く別個の組織であると主張するが、上記事実関係に照らし採用しない。

・献金等勧誘行為の違法性について
(1)一般に、宗教団体が、当該宗教団体の宗教的教義の実践として、あるいは、布教の一環として、献金を求めることや、宗教的な意義を有する物品の販売などを行うこと自体は、信教の自由の一様態としての宗教活動の自由として保障されなければならないものであって、これを殊更に制限したり、違法と評価することは厳に慎まなければならない。

また、献金や、物品等の対価の支払いなど、一定の金員の出捐を決意するに至る過程において、他者からの働きかけが影響することは当然の事理というべきである上、金員の出捐を勧誘するに際して、勧誘者が、当該宗教団体における教義等に基づく、科学的に証明し得ない様な事象、存在、因果関係等を理由とするような吉凶禍福を説き、金員を出捐することによって、そうした吉凶禍福を一定程度有利に解決することができるなどと被勧誘者に説明することについても、その説明内容がおよそ科学的に証明できないことなどを理由として、直ちに虚偽と断じ、あるいは違法と評価することもすべきではないし、予め相手方の境遇や悩み等を把握した上で、そうした悩み等を解決する手段として、献金等の「金員の」出損を含む宗教的教義の具体的実践を勧誘することも、直ちに違法と評価されるものではない。

(2)しかし、当該勧誘が、献金等を含む宗教的教義の実践をしないことによる害悪を告知するなどして、殊更に被勧誘者の不安や恐怖心の発生を企図し、あるいは、不安や恐怖心を助長して、被勧誘者の自由な意思決定を不当に阻害し、被勧誘者の資産状況や、生活状況等に照らして過大な出捐をさせるようなものと認められるような場合には、当該行為が形式的には宗教的活動の名の下に行われているとしても、もはや社会的相当性を逸脱したものとして違法の評価を免れないというべきである。したがって、社会的相当性を逸脱して不法行為になるか否かの判断は、当該勧誘が被勧誘者の不安や恐怖心の発生を煽り、助長するような内容のものであるか否か、被勧誘者の資産状況や、生活状況に照らして過大な出捐をさせるようなものであるか否かを社会通念に従って総合的に判断してされるべきものである。

(以下略)