◆損害賠償請求事件 福岡地裁判決(平成6年5月27日)

判 決 要 旨
(九四年五月二七日言渡)

平成二年●第一〇八二号
損害賠償請求事件判決要旨
一 当事者
 原  告 A
 同  右 B
 被  告 宗教法人 世界基督教統一神霊協会
二 本件事案の概要
 本件は、被告の信者らによる違法な献金勧誘行為により、原告Aが三〇〇〇万円の献金を、原告Bが二一〇万円の献金をさせられるなどの損害を被ったとして、原告らが被告に対して右損害につき、民法七〇九条又は七一五条に基づいて損害賠償を請求した事案である。
三 主な争点
 被告の不法行為責任の成否である。
四 当裁判所の判断
1 被告の信者らによる原告らに対する献金勧誘行為の有無
● 原告Aに対する献金勧誘行為
 被告の信者であるIらは、夫を亡くして失意の日々を過ごしていた原告Aに絵画を購入させたのをきっかけとして接近した後、霊石愛好会の霊場や天地正教の道場などに原告Aを誘い出し、先生と呼ばれる被告の信者らが、原告Aの亡夫が地獄界で苦しんでいるとか先祖の因縁によって不幸が起こるなどと言って原告Aの恐怖心をあおり、原告Aに五〇〇万円の献金をさせたり、弥勒像や念珠の代金等七〇〇万円を出捐させたりなどしていた。そして、昭和六三年六月下旬ころ、被告の信者であるUらは、原告Aから三〇〇〇万円献金させる目的で、福岡市南区大橋所在のマンションの一室に原告Aを呼び出し、その両脇に座って原告Aの退室を困難にした上で、被告に献身していた被告の信者Eが、原告Aに対し、「ご主人が地獄界で苦しんでいる。五〇〇〇万円、最低でも三〇〇〇万円出してください。ご主人が三〇〇〇万円出してくれというのが聞こえます。A家が絶える。また不幸が起こる」などと言ってUらとともに約六時間にわたって執拗に献金を迫った。その結果、これに困惑、畏怖した原告Aは、被告に対して三〇〇〇万円の献金をし、被告も福岡教会においてこれを祝福する儀式をした。
● 原告Bに対する献金勧誘行為
 印鑑の訪問販売をしていた被告に献身中の信者であるSらは、原告Bが印鑑を購入したのをきっかけに原告Bに接近 し、福岡市博多区所在のビル内にあるひまわり会でビデオを見ながら人生の勉強をするように誘った。これに応じた原告Bが同所に通い始めると、次第に被告の教義である統一原理を講ずる内容のビデオを見せられるようになり、再臨のメシアが被告の教組文鮮明であることを明かされるなどしていた。そして、平成元年一月二七日、Sは、原告Bから二一〇万円献金させる目的で、原告Bをひまわり会の一室に呼び出し、同室において、被告の信者であるGは、原告Bに対し、内縁の亡夫が早世したことなどについて「あなたがそうなったのはあなたの母方のおばあちゃんの因縁です。あなたが先祖の因縁をすべて清算しないとあなた自身も天国へ行けないし、あなたの家系は誰も救われない。因縁を清めるために財産をすべて投げ出しなさい。献金しなさい」などと言って約二時間半にわたって執拗に献金を迫った。その結果、これに困惑、畏怖した原告Bは、ひまわり会において二一〇万円の献金をした。
2 被告の信者らによる献金勧誘行為の違法性の有無
 被告の信者らによる原告A及び原告Bに対する右献金勧誘行為は、被告の信者らにとって布教活動の一環として行われたものであったとしても、その目的、方法、結果において到底社会的に相当な行為であるということはできず、違法であり、民法七〇九条の不法行為に該当する。
3 被告の不法行為責任の有無
 非営利団体である宗教法人に対しても民法七一五条の適用があると解されるところ、身も心も被告に捧げて被告のために活動する、いわゆる献身中のEやSらを含む右献金勧誘行為に関与した被告の信者らは、被告との間に実質的な指揮監督関係にあったものと認められ、したがって、右信者らは同条に定める被告の被用者の地位にあるというべきであり、また、右献金勧誘行為が被告の教義である万物復帰の実践としてSらが理解していたことや右献金がいずれも被告に帰属していることなどからみて、原告らに対する右献金勧誘行為は同条の定める被告の「事業の執行につき」という要件も充足するというべきであるから、結局、被告は、民法七一五条に基づき原告らに対して不法行為責任を負う。
4 結 論
 原告Aの四四〇〇万円(献金相当額三〇〇〇万円、慰謝料一〇〇〇万円、弁護士費用四〇〇万円)の請求に対し、三五〇〇万円(献金相当額三〇〇〇万円、慰謝料一〇〇万円、弁護士費用四〇〇万円)を認容し、原告Bの五三〇万円(献金相当額二一〇万円、慰謝料二三〇万円、弁護士費用九〇万円)の請求に対し、二六〇万円(献金相当額二一〇万円、慰謝料二〇万円、弁護士費用三〇万円)を認容した。
判 決 全 文

平成二年●第一〇八二号損害賠償請求事件
判  決
 原 告 A
 同 右 B
  東京都渋谷区松濤一丁目一番二号
 被 告 宗教法人 世界基督教統一神霊協会
 右代表者代表役員 藤 井 ● 雄
  福岡市南区日佐四丁目三九番四号
 被告補助参加人  甲
  福岡市博多区新和町一丁目一〇番一五−六〇七号
 同 右 乙

主  文
一 被告は、原告Aに対して三五〇〇万円及びこれに対する昭和六三年六月二六日から支払ずみまで年五分の割合による金員を、原告Bに対して二六〇万円及びこれに対する平成元年七月二七日から支払ずみまで年五分の割合による金員を、それぞれ支払え。
二 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
三 訴訟費用は、原告Aと被告との間においては、同原告に生じた費用四分の三を被告の、その余を各自の負担とし、原告Bと被告との間においては、同原告に生じた費用の二分の一を被告の、その余を各自の負担とする。
四 この判決は、一項に限り仮に執行することができる。

事実及び理由
第一 原告の請求
 被告は、原告Aに対して四四〇〇万円及びこれに対する昭和六三年六月二六日から支払ずみまで年五分の割合による金員を、原告Bに対して五三〇万円及びこれに対する平成元年七月二七日から支払ずみまで年五分の割合による金員を、それぞれ支払え。

第二 事案の概要
 本件は、原告らが、いずれも、被告の信者らによる違法な献金勧誘行為により、原告Aは三〇〇〇万円の献金を、原告Bは二一〇万円の献金をさせられるなどの損害を被ったとして、被告に対し、右損害について民法七〇九条又は同法七一五条に基づき賠償を請求した事案である。
一 争いのない事実
 被告は、昭和三九年に設立登記された宗教法人であり、原告Aは、昭和六三年六月二六日、被告に対し、三〇〇〇万円の献金をした。
二 争 点
1 被告の信者らによる原告らに対する献金勧誘行為の有無
● 原告Aに対する献金勧誘行為
(原告Aの主張)
● 三〇〇〇万円の献金に至る経緯
 原告Aは、昭和六二年八月二日夫を心臓病で亡くし、その生命保険金約四五〇〇万円の支払を受けていたものの、家業は廃業せざるを得なくなってその残務整理をしていたところ、昭和六三年二月ころ、顔見知りであった被告の信者である補助参加人甲が、突然、「是非お参りさせて下さい」といって原告A宅を訪れた。そして、甲は、原告Aから亡夫の死因や仕事のことなどを聞き出した上、原告Aを有限会社都美が開いている絵画展示場に連れて行き、右展示場において、原告Aに対し、「自分も一枚買った。これを持ったら幸せになるよ」などと約二時間にわたり強引に絵画の購入を勧めて断りきれない状況に追い込み、原告Aに価格二二万円の絵画一点を購入させた。その後、甲は、原告Aに対してビデオセンターに行くことを勧めたり、霊界についてのビデオを見せるなどしていたところ、同年四月初めころ、林田某(以下「林田」という。)と共に原告A宅を訪問し、「ビデオ大会で偉い先生が会いたがっている。ご主人が地獄界で苦しんでいる。とにかく救ってあげなさい」などと言って原告Aを霊石愛好会美野島霊場(以下「美野島霊場」という。)に連れて行った。そして、右霊場において、先生と呼ばれていた永良某(以下「永良」という。)が、弥勒像に祈り、体を震わせ泣きながら、「ご主人が降りてきている。自分は震えが止まらない。御主人が地獄界で苦しんでいるから献金してください。五〇〇万円献金しなさい。御主人が頼んでいるから、決心しなさい」などと原告Aに言ったり、甲や林田も一緒になって献金を迫ったので、その結果、原告Aは、右霊石愛好会に五〇〇万円の献金をさせられた。また、甲は、同年四月末日ころ、原告Aに対して被告の信者である補助参加人乙を紹介していたところ、その数日後、乙は、原告A宅を訪れて、「偉い先生がお会いしたがっている」などと言って原告Aを宗教法人天地正教(以下「天地正教」という。)の春日原道場(以下「春日原道場」という。)に連れて行った。そして、右春日原道場において、原告Aに対し、先生と呼ばれている氏名不詳の女性が「御主人がまだ地獄界で苦しんでいる」などと言う一方、乙も「三位一体だから、弥勒仏と念珠二つも一緒にしろ。あなたには一二という数字がいいから、一二〇〇万円になるように、あと七〇〇万円出すように。先生には霊界のこと、地獄界で夫が苦しんでいることが分かり、いくら献金してくれという声が聞こえている」などと言って長時間にわたり弥勒像などの購入や献金を執拗に説得し、その結果、これを信じた原告Aは、弥勒像及び念珠の代金五一三万円並びに天地正教に対する献金一八七万円の合計七〇〇万円を支払わされたが、その際、右献金先についてはわからなかった。さらに、原告Aは、同年五月ころ、甲から「今まで使っている印鑑は印相が悪い。長さも短いから買い替えたほうがいい。御主人の死と関係がある」などとあたかも夫を亡くした不幸が印鑑に関連するかのように言われたため、その数日後に、甲から紹介された若い女性から印鑑四本を二〇万円で買わされた。
● 三〇〇〇万円の献金における勧誘行為
(原告Aに対する不法行為)
 原告Aは、同年六月二六日、乙から福岡市南区大橋にあるビデオセンター(同センターは、「オアシス会」と呼ばれていた。以下「オアシス会」という。)に来てくれといわれたので、乙と被告に献身している徳永某(以下「徳永」という。)と共に西鉄大橋駅西口にあるマンションに行った。そして、同所において、原告Aは、先生と呼ばれていた女性安達明美(現姓遠藤明美、以下「遠藤」という。)から、以前に原告Aが作成した同人の家系図を見ながら、「御主人の父も四〇代で亡くなって、ご主人がまた地獄界で苦しんでいる。五〇〇〇万円、最低でも三〇〇〇万円出してください。ご主人が三〇〇〇万円出してくれというのが聞こえます。A家が絶える。また不幸が起こる」などと献金を要求されたのでこれに驚き、一度は「娘も高校受験で学費も要るから献金は出来ない」と言って右要求を断った。しかし、遠藤は、原告Aに対し、「責任を持つ。子供は奨学金を受ければいい。ご主人の父も四〇代で亡くなっていて、男が短命とか財の因縁が強い。娘も早くとられる。先祖に色情因縁が強い。このままでは娘さんがとられる。献金しないことには不幸が起こる」などと言い、徳永や乙も、原告Aの両脇に座り、原告Aの手を握りながら、「頑張って、頑張って」などと言って原告Aの退席を阻み、原告Aが逃げ出せないような状況にして右献金を求めたが、その間、遠藤は、「お祈りしてきます」と言っては何度か席を立ち、戻って来ては献金を迫るという行為を繰り返した。結局、原告Aは、このように午前一〇時ころから昼食時間約二〇分を除いて午後四時三〇分ないし五時ころまで約七時間にわたり献金を求められた結果、右話の内容に畏怖した上、右のような状況に疲労して、早く帰宅したいとの一心でやむなく献金を承諾し、その二、三日後、献金先がわからないまま現金三〇〇〇万円を乙に渡した。
(被告の主張)
 遠藤は、同日午前一〇時三〇分ころから午後一時ころまでの間に、原告Aに対し、原告Aが学んだ教理及び文鮮明をメシアとして信ずるか否かを確認し、その統一原理に対する理解と信仰心が十分であると考え、献金が、文鮮明の提唱する統一運動、ひいては世界に貢献するため、及びその貢献を通して子孫に徳を残すために行うものであるとの説明をした上で、予め原告Aの資産を考慮して決定済みの金額三〇〇〇万円を提示し、幾度も原告Aに意思確認をした上で献金の承諾を得たものである。また、遠藤は、トイレに一回行っただけで何度も席を立った事実はなく、遠藤が献金を求めた際に同室したのは少なくとも徳永のみであり、原告Aの両脇に乙及び徳永が座り、原告Aの手を握って「頑張って、頑張って」などと言った事実はないから、原告Aは何時でも退室できる状態にあったものである。
● 原告Bに対する献金勧誘行為
(原告Bの主張)
● 二一〇万円の献金に至る経緯
 原告Bは、昭和六三年三月内縁の夫を亡くし、失意の日々を過ごしていたところ、同年一一月一七日、原告Bの勤務先を訪れた被告の信者である重富輝美(以下「重富」という。)から印鑑販売会社の「弥勒堂」の名刺を出された上、「あなたの持っている印鑑は不幸な印鑑だから買い替えなさい。夫が亡くなったのもその印鑑を持っているせいだ」などと言われたので、印鑑三本を一二万円で購入した。その際、重富から「運勢を調べる先生がいるから紹介しましょう」などと勧誘されていたので原告Bは、同月二四日、重富から福岡市博多区博多駅東一丁目一三番所在の松岡ビル三階にある博多教育文化センター(同センターは「ひまわり会」と呼ばれていた。以下「ひまわり会」という。)に連れて行かれて運勢を見るという先生を紹介された。そし て、原告Bは、ひまわり会が被告の伝道のシステムの一つであることを秘匿されたまま、「今、時期的に天の摂理が一番いいから、来年からお勉強に来なさい」などと言われたので同会に入会するとともに、受講料一二万一〇〇〇円を支払わされた。
● 二一〇万円の献金における勧誘行為
(原告Bに対する不法行為)
 原告Bは、平成元年一月二七日、重富から「特別に来てください」などと連絡を受けてひまわり会に呼び出され、同会に赴いた。そして、同会において、占いの先生という権藤某(以下「権藤」という。)は、原告Bに対して同人とその亡夫の家系図をそれぞれ作成させ、身上話をさせた後、原告Bに対し、「母方のおばあちゃんからのたたりで、あなたが先祖の因縁を清算しなければ報われない。先祖の因縁がついているから、ご主人が亡くなったりした。色々な悪いことが起きるのは亡くなったおばあちゃんの因縁だ」などと因縁を説いた上、「その因縁を清算するために、お金を出しなさい。お金を出さないとこれからも因縁が払われないで悪いことが起こりますよ。二一〇万円献金しなさい」と厳しい口調で献金を求めた。そこで、原告Bは、不安な気持ちになり、「考えさせてください」と返答したが、権藤は、「献金は待てない。天からお達しがあってすぐ返事しないと。あとから返事してはだめ」などと言って同日午後六時三〇分ころから同日午後九時前ころまで繰り返し献金を迫った。その結果、原告Bは、再び祖母の因縁で不幸が起きることのないよう、また、自分の罪が消えるなら仕方がないと考えて献金することを承諾し、翌日、権藤に現金二一〇万円を渡した。
● 二一〇万円の献金後の経緯
 原告Bは、同年三月二四日、ふよう駅前ハイツ一一〇七号室に呼び出され、同所において、権藤や木下某(以下「木下」という。)から原告Bが取得した夫の生命保険金額を尋ねられた上、権藤から「そんなにお金を持っていたらあなたもよくないことが起きる。天に差し上げて、浄財にして返すから貸してくれ」などと、また、木下からも「自分も貸して月々返済してもらっている。借用書も切る」などとそれぞれ言われた。その結果、
2 被告の信者らによる前記献金勧誘行為と被告との関係の有無
(原告らの主張)
● 被告は、昭和四六年、壺や多宝塔等の輸入元となる株式会社ハッピーワールドを設立し、全国の主要都市に卸元会社(九州では株式会社世界のしあわせ九州が設立されたが、現在は株式会社東亜商事に商号変更している。)や末端の販売組織網を形成する販売会社を作り、被告の信者をして、右会社の運営やマニュアルによって統一された販売方法ないし販売に伴う苦情処理方法に従って販売活動を行わしめているものである。そして、原告Aが絵画を購入した有限会社都美は右末端の販売会社の一つであり、また、原告Aが購入した印鑑や弥勒像等の物品や原告Bの購入した印鑑について被害回復の責任を負ったのは右株式会社東亜商事である。これらのことからみても、前記原告らに対する被告の信者らの行為 は、被告の遂行している霊感商法の一環として行われたものであることは明らかである。
● 霊石愛好会は、昭和六二年七月ころ、被告の方針に従って霊石を授かって喜んでいる人達を装った被告の婦人信者を中心に発足したものであり、また、被告は、昭和六三年三月ころ、天地正教を発足させて、右霊石愛好会の組織をそのまま右天地正教に移行させたものであり、被告と霊石愛好会及び天地正教とは一体のものである。
● ビデオセンターは、被告の伝道システムの一つであり、原告Aが通っていたオアシス会や原告Bが通っていたひまわり会も右ビデオセンターの一つである。
● 前記原告Aに対する行為に関与した甲、乙、徳永及び遠藤、あるいは、前記原告Bに対する行為に関与した重富や権藤、原告Bに対する四〇〇万円の借用書の作成名義人である加茂清子らは、いずれも被告の信者である。
● 原告Aが絵画を購入した有限会社都美、弥勒像や念珠等の代金や献金を受領した天地正教、原告Bが印鑑を購入した弥勒堂や献金をしたひまわり会は、いずれも被告の組織であり、原告Aが献金した三〇〇〇万円を被告が受領したことなどからすれば、原告Aや原告Bが出捐した金員をいずれも被告が受領していることは明らかである。
● 右●ないし●の事実を総合すれば、被告の信者らによる原告らに対する前記献金勧誘行為は、いずれも被告の組織的活動の一環として行われたものであることは疑う余地がない。
(被告の主張)
 原告らの主張する霊感商法の組織やビデオセンターは、被告の信者らが伝道活動及び経済活動のために独自に設立したものであり、被告が右組織に対して指揮、監督を行っている事実はなく、被告とは何ら関係のない組織である。また、天地正教は、法人格を取得する以前には天運教という名称で活動していたところ、昭和六二年一二月、教主を川瀬カヨ、信仰対象を弥勒菩薩として北海道庁で認証された宗教団体であり、被告とは全く別法人であり、また、霊石愛好会は宗教法人ではない任意団体であり、いずれも被告とは何ら関係のない団体である。
3 被告の信者らによる前記献金勧誘行為の違法性と被告の不法行為責任の有無
(原告らの主張)
 被告が行っているいわゆる霊感商法の手法は、販売を担当する被告の信者らが、全国的にマニュアル化された方法に従い、被告の信者であることや被告の組織的活動の一環として行っていることを秘匿しつつ戸別訪問をし、「手相を見てあげましょう。姓名判断をしてあげましょう」などと言いながら相手の悩み事や不安事などを聞き出し、それらが先祖の因縁により生じていることや持っている印鑑の印相が悪いこと、印鑑を購入することによって運勢が開けることなどと言って、印鑑、あるいは宝石、毛皮、絵画などの購入を強く勧めるなどしたりするものである。そして、右販売に成功すると、これを契機として、被告の信者らは、相手の資産を把握した上で、既に相手から聞き出した悩み事等について、「先祖の悪霊が付いている。因縁を断ち切らなければさらに家族に不幸が続く」などと言って不安をあおり、祭壇等が置かれ宗教的な独特の雰囲気作りをされた天地正教や霊石愛好会等の霊場と称する場所等に誘い出し、同所において、霊界のことが分かる偉い先生として特別に権威付けられた被告の信者が先祖の因縁や近親の死者の訴えを繰り返し述べて、壺、念珠、多宝塔等の高額商品の購入や献金を求め、相手がこれに応じるまで説得を続け、その間、相手を霊場に連れて来た被告の信者らはその脇にいて説得に応ずるよう勧めたりなどしていた。このように、多様な手口を用いて存在の定かでない因縁や霊界の話に籍口して相手の不安をあおり、その全財産を奪う目的を持って、計画的かつ組織的に献金等を求める被告の信者らの行為は、違法なものであり、前記のように被告は、その組織的活動の一環として右行為を被告の信者らに行わせている以上、民法七〇九条に基づき自己の不法行為責任として、あるいは、同法七一五条に基づき使用者責任として、損害賠償義務を負っていることになる。そして、本件においても、被告は、原告Aに対しては、甲が被告の信者であることや被告の組織的活動の一環として行っていることを秘匿して絵画の購入を勧め、これを購入したのを契機として、原告Aの悩み事や資産を把握した上で、先祖の因縁や亡夫の訴えを述べて原告Aの不安をあおり、その結果、原告Aに弥勒像その他の高額な物品を購入させた後に、三〇〇〇万円という多額の献金をさせたものであり、また、原告Bに対しても、重富が被告の信者であることや被告の組織活動の一環として行っていることを秘匿して印鑑の購入を勧め、これを購入したのを契機として、原告Bの悩み事等や資産を把握した上で、先祖の因縁や亡夫の訴えを述べて原告Bの不安をあおり、その結果、原告Bに二一〇万円という多額の献金をさせるなどしたものである。したがって、原告らの資産の大部分を出捐させた被告の信者らの前記献金勧誘行為は、いずれも民法七〇九条に該当する違法な行為というべきであり、したがって、被告は、原告らに対し、民法七〇九条あるいは同法七一五条に基づき損害賠償義務を負っているものである。
(被告の主張)
 原告らの主張するように、被告の信者がいかなる宗教であるかを明かさないまま布教活動に及んだとしても、直ちに相手方の信教の自由を害するものではなく、社会通念上許された布教行為というべきである。また、被告は、原告の主張するような霊感商法を行うよう指示したり、販売活動等のマニュアルを作成したり、その作成の指示をしたことはない。被告の信者らによる原告らに対する前記献金勧誘行為は、いずれも何ら不法行為と評価されるものではなく、民法七〇九条あるいは同法七一五条の要件を充足するものではない。
4 原告らの損害の有無
(原告らの主張)
● 原告Aの損害 合計金四四〇〇万円
● 経済的損害 金三〇〇〇万円
 原告Aは、被告の信者らによる前記違法な献金勧誘行為により三〇〇〇万円の献金をさせられた結果、同額の損害を被った。
● 慰謝料 金一〇〇〇万円
 原告Aは、夫を亡くしてその精神的、経済的な支えを失っていたところ、被告がこれに乗じて被告の信者らをして前記違法な献金勧誘行為を行わしめたため、亡夫が残した生命保険金のすべてを奪い取られてしまい、これによる後悔の念と右出捐を納得しようとする気持ちの間で一人悩み苦しみ続ける日々を強いられ、さらに被告の信者らから再三にわたり娘を被告の集会に連れてくるよう執拗に勧誘されて恐怖感に苛まれ続けたものである。したがって、この精神的苦痛を慰謝するためには、一〇〇〇万円の慰謝料が相当である。
● 弁護士費用 金四〇〇万円
● 原告Bの損害 合計金五三〇万円
● 経済的損害 金二一〇万円
 原告Bは、被告の信者らによる前記違法な献金勧誘行為により二一〇万円の献金をさせられた結果、同額の損害を被った。
● 慰謝料 金二三〇万円
 原告Bは、内縁の夫を亡くして失意の日々を送っていたところ、被告がこれに乗じて被告の信者をして前記違法な献金勧誘行為を行わしめたため、多額の献金や借金をするなどして多大な経済的出捐を強いられ、そのため著しい精神的苦痛を受けたのであるから、この精神的苦痛を慰謝するためには、二三〇万円の慰謝料が相当である。
● 弁護士費用 金九〇万円
第三 争点に対する判断
一 被告の信者らによる原告らに対する献金勧誘行為の有無について
1 原告Aに対する献金勧誘行為
 成立に争いのない甲第四号証、乙第二号証の一及び二(ただし、いずれも後記採用しない部分を除く。)、原告A本人尋問の結果により真正に成立したと認められる甲第一、第五四及び第五五号証、第五六号証の一及び二、弁論の全趣旨により真正に成立したと認められる甲第七四ないし第七六、第一一二及び第一四四号証、証人重富、同甲、同乙及び同遠藤の各証言(ただし、証人重富の証言を除くその余の証言中いずれも後記採用しない部分を除く。)、原告A本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば次の事実が認められ、乙第二号証の一及び二の記載内容並びに証人重富の証言を除くその余の証言中のこの認定に反する部分はいずれも採用できず、ほかにこの認定を覆すに足りる証拠はない。
● 三〇〇〇万円の献金に至る経緯
● 原告Aは、昭和六二年八月二日、夫を心臓病で亡くして経済的、精神的支柱を失い、亡夫が営んでいた自営業を廃業してその残務整理をしながら、一人娘のCと失意の日々を過ごしていたところ、昭和六三年二月ころ、近所に住む被告の信者である甲が、被告との関係を秘して原告A宅を弔問に訪れた。その折、原告Aが寂しさも手伝って亡夫のことなどについてあれこれと話をしたところ、甲は、知人が開催しているという絵画の展示会に原告Aを誘った。原告Aは、絵画を鑑賞するのも気分転換になると思い、その誘いに応ずることとして、甲と共に博多駅裏にあるビル内に設けられた展示会場に行ったところ、右展示会は絵画を展示して鑑賞させることを目的とするものではなく、有限会社都美が主催する専ら絵を販売するための展示会であった。甲は、右展示会の販売担当者と共に原告Aに付いて右会場を回りながら、「気に入ったのがあったら買ったらいい。子供さんの部屋にぴったりよ。自分も買っているから一枚買ったら」などとしきりに絵画の購入を勧めたため、原告Aは、甲が亡夫の弔問に訪れてくれたこともあって次第にその勧めを断り切れない気持ちになり、二二万円の絵画一点を購入することとした。すると、甲は、右販売担当者に対して「お願いします」と言って原告Aが購入を決めたことを伝え、原告Aは、購入契約書を作成するなどの購入手続を済ませてその場で手付金一万円を支払い、残代金二一万円については三回に分割して有限会社都美に振込の方法で支払った。
● 甲は、原告Aが絵画を購入してからというものの、頻繁に原告A宅を訪れるようになり、原告Aをオアシス会にビデオを見に来るよう誘ったり、丹波哲郎の霊界の話等を内容とするビデオを持参しては、原告Aに見せるなどしていた。そして、昭和六三年四月初めころ、原告Aは、甲から紹介された林田が、原告Aに対し、「永良先生という滅多に会うことのできない偉い先生が来て会いたがっています。ご主人が地獄界で苦しんでいるから、とにかくお会いして救ってあげなさい」などと言って永良が滅多に会えない先生であり、その先生は亡夫が苦しんでいることが分かるというのであれば面会してみようと考え、その誘いに応ずることにして、甲と林田に連れられて博多駅近くにある美野島霊場へ行き、右霊場の畳敷の部屋に入った。同室では永良先生と呼ばれていた永良が弥勒像の前でお祈りをしていたが、その後、永良は、体を震わせて泣きながら、原告Aに対し、「ご主人が降りてきています。ご主人が地獄界で苦しんでいる姿が見えます。自分は震えが止まらない。ご主人が五〇〇万円を献金してくれと言っています」などと言って、五〇〇万円を献金するように求めた。そこで、原告Aは、永良の真に迫った様子に驚きや恐れを感ずる一方、以前霊界に関するビデオを見せられていたこともあって、永良には本当に地獄界で苦しむ亡夫の姿が見えているものと真に受けたものの、突然に五〇〇万円もの高額な献金を求められても応じることはできないと考えて右献金の求めを断った。すると、永良は、席を立って別室に行き、戻って来ては原告Aに献金を促し、未だ原告Aの決心がつかないとみるや、再び席を立って別室に行き、戻って来ては原告Aに献金を促すという行為を何度も繰り返した。その間、甲と林田は、原告Aの両脇に寄り添いながら、「頑張って。とにかく信じなさい」などと言って永良の求めるとおりに献金するよう促した。その結果、原告Aは、永良らの余りに執拗な要求と恐れのために、これ以上献金を断り続けることはできないと思い、遂に、右献金を承諾した。しかし、原告Aは、献金を承諾したことに対する後悔の念を払拭できず、同日夜、右献金を断ろうと考えて甲に電話をしてその旨を申し出たところ、甲が、「返事を延ばすと夢に出る。早くした方がいい。明日にでもしないと大変ですよ」などと言って原告Aの右訴えを聞き入れようとせず、かえって献金をするように促したため、結局、献金を断ることができなかった。そして、その翌日、原告Aは、林田と共に福岡相互銀行井尻支店に行き、五〇〇万円の払戻しを受けたが、その際、林田は、原告Aに対し、一度に五〇〇万円もの払戻しを受けると右支店の銀行員からその使途について詮索されることがあるので、予め、保険の一時払いをするために預金を払い戻すことや保険の外交員を同伴していることを答えるよう指示していた。その後、原告Aは、右払戻しを受けた五〇〇万円を美野島霊場へ持参し、同所に置かれた弥勒像の前に供えたが、終始、五〇〇万円の献金先を知らされず、また、右献金の領収書を求めたが、結局、発行して貰えなかった。
 なお、その当時、原告Aの右口座には、亡夫の生命保険金四五〇〇万円が振り込まれていた。
● 昭和六三年四月末ころ、甲が、原告Aに対して紹介していた被告の信者である乙は、原告Aと同じく未亡人であることなどの身上話をして、「偉い先生がお会いしたがっています。直接お会いできることは滅多にないのですが、有り難いことです」などと言って原告Aを春日原道場に連れて行った。そして、原告Aは、同所において、ビデオを見せられたり、先生と呼ばれていた被告の信者である江頭廣樹の「二〇〇〇年の終末」などの講義を聞かされたりなどした。その数日後、原告Aは、乙と共に春日原道場に行ったところ、同所において、先生と呼ばれていた女性から、多宝塔、弥勒像及び釈迦像の三つを見せられて、「どれに一番気をひかれますか」と尋ねられたため、原告Aが弥勒像を指さすと、「それじゃあ弥勒像を授けましょう」と言われ、また、同席していた乙からも、「信じたら絶対に幸せになれる。三位一体だから念珠も二本授かりましょう」などと弥勒像だけでなく念珠の購入も勧められるとともに、「あなたは一二という数字がいいから、一二〇〇万円になるように七〇〇万円にしましょう」などと言って、前記五〇〇万円の献金と右代価を合計して一二〇〇万円となるように七〇〇万円の出捐を求められた。これに対し、原告Aは、右購入を躊躇していたが、右先生と呼ばれていた女性から地獄界で亡夫が苦しんでいるなどと言われて右購入を迫られ、結局、右購入方を承諾し、株式会社盛運堂の担当者から弥勒像と念珠を見せられた。そして、原告Aは、乙を同行の上、九州相互銀行井尻支店において七〇〇万円の払戻しを受け、これを春日原道場の祭壇に供えたが、当初、右七〇〇万円は、弥勒像及び念珠の購入代金と考えていたところ、後に購入申込書により、その内訳は、弥勒像及び念珠などの購入代金が合計五一三万円、天地正教への献金が一八七万円であることを知った。
● 甲は、その後も頻繁に原告A宅を訪れてはビデオを見せたり、原告Aを誘っては共にオアシス会に連れて行くなどしていたが、昭和六三年五月ころ、甲の求めに応じて当時使用していた印鑑を見せた原告Aに対し、「今まで使っていたのは印相が悪いですよ。長さも短いから買い替えたほうがいい」などと言って印鑑を購入するように勧めた。そこで、原告Aは、その数日後甲が連れて来た印鑑販売員の若い女性から自分のために印鑑三本組セットと長女のために印鑑一本を合計二〇万円で購入し、「東洋印相協会 天本妙光」との記載のある鑑定証を受け取った。
● 三〇〇〇万円の献金とその勧誘行為
● 原告Aは、頻繁に甲らに誘われるなどしてオアシス会に通い、また、同所において被告の信者である土赤某(以下「土赤」という。)から一〇日間にわたって集中的に被告の教義である統一原理(以下「統一原理」という。)等についての講義を受けていたところ、昭和六三年六月下旬ころ、乙からオアシス会に呼び出されたため同所に赴いた。同所では、乙のほかに被告の信者で被告に献身(献身とは、被告の信者が、統一原理を受け入れて身も心も被告に捧げるべく、仕事を辞め、家族から離れてホームと呼ばれる場所で他の信者と共同生活をするなどしながら被告のための活動を行うことである。)していたが徳永が原告Aを待っており、乙と徳永は、同日午前一〇時ころ、原告Aをさらに福岡市南区大橋三丁目二番所在のマンションエスポワール大橋の最上階にある一室に連れて行った。同所はいわゆる3DKの間取りであり、原告A、乙及び徳永は、その中の四畳半ほどの広さを有する和室に入室したところ、そこには被告の信者で被告に献身していた遠藤が原告Aらを待っていた。遠藤は、仏像等は置かれていない同室において、目を閉じたまま二、三分間小声で「お父様」とか「今日のよき日に」とかの言葉を発しながらお祈りをした後、原告Aに対し、「ご主人が地獄界で苦しんでいます。ご主人が五〇〇〇万円を望んでいます。最低でも三〇〇〇万円を出してくれと言っています」などと言って献金を要求した。原告Aは、再び献金を要求されることを全く予期していなかったため、遠藤のこの要求に驚き、「娘が受験で学費にお金が必要だから献金できません」と言って右要求を断り、急いで退席しようと考えたが、その両脇に乙と徳永が座っていて退室できるような状況ではなく、また、遠藤は、「責任を持ちます。生活保護もあります。子供さんは奨学金を受ければいい」などと言って取り合わず、献金を求めた。それでも原告Aが右献金の要求を拒み続けると、遠藤 は、「お祈りをして来ます」と言って一旦席を外して別の部屋に行き、しばらくして戻って来るや、原告Aに対し、「ご主人は三〇〇〇万円を望んでいます。ご主人が地獄界で苦しんでいるので、三〇〇〇万円献金しないとまた不幸が起こる。A家が絶える」などと繰り返し言ってさらに献金を迫ったが、原告Aは、「三〇〇〇万円を献金してしまうと夫の残した生命保険金は全部なくなってしまいます」と言ってなお拒み続け、このような押し問答が続いた。そして、原告Aは、その場に用意された昼食をとったが、その後も、同様の押し問答が続き、それとともに遠藤の口調も益々強くな り、遠藤は、以前原告Aがオアシス会において書いた家系図を示しながら、「先祖に色情の因縁が強い。ご主人の父親が短命だったからご主人の命を奪った。財の因縁でご主人がとられた。このままでは娘さんがとられる」などと語気を強めて献金を迫り、原告Aの両脇に座っていた乙や徳永もそれぞれ原告Aの手を握って、「頑張って、頑張って。信じたらいいから」などと言い続けて遠藤の言うとおりに献金するようあおったため、原告Aは、先祖の因縁で娘が早死にしてしまうのではないかと真に受けて不安に陥り、また、そのような状況が続いては帰宅できず、その場で献金を断っても再び執拗に献金を求め続けられると思い、頭の中が混乱して遂に、「そうします」と言って三〇〇〇万円の献金を承諾するに至った。すると、乙や徳永は、涙を流しながら喜び、「ありがとう。ありがとう」と何度も原告Aに礼を言う一方、乙らは、原告Aに対し、右献金のことを他言すれば、「サタンが入る」などと言って堅く口止めした。その後、原告Aは、同日午後四時三〇分ないし同五時ころ、右部屋から退出した。
 なお、遠藤、土赤及び被告の信者である翁長某らは、同月初めころ、原告に対して右献金を要求するに当たり、原告Aの献金額が六〇〇〇万円と記載された教育リストをもとに、予め原告Aに対する統一原理等を教育する日程を組んだり、その献金額を決定したりした上で、前記一〇日間にわたる講習を行い、遠藤が原告Aに対して予め決められた献金額を要求したものであった。
● 原告Aは、献金を承諾したことを後悔し、脅されて三〇〇〇万円の献金をさせられたとの思いから警察に通報することも考えたが、不幸が訪れるのではないかという恐怖心からそれもできず、また、翌日乙から献金を催促する電話があった際、三〇〇〇万円の支払を猶予してもらえないかと相談したが、乙はこれに取り合わず、かえって「頑張って、頑張って」などと言って献金を促すような状態であった。結局、昭和六三年六月二六日、原告Aは、一人で九州相互銀行井尻支店において三〇〇〇万円の払戻しを受けた後、乙の指示に従い、原告A宅の近くにある「グッディ」という雑貨店の駐車場に駐車していた自動車の中で待っていた乙に三〇〇〇万円を手渡した。
● 数日後、原告Aは、乙から三〇〇〇万円の献金を祝う儀式を行うとの連絡を受け、福岡市博多区東比恵所在の被告福岡教会に赴いた。右福岡教会において、教会長から原告Aに対して右献金の礼が述べられるとともに、右献金は被告が主体となって日本と韓国の間に掘削が計画されている日韓トンネルの掘削作業資金とする旨の説明があり、原告Aは、このとき初めて本件献金が被告に対する献金であったことを知った。そして、被告の教祖文鮮明夫妻の写真の前でピアノを弾き、甲、乙ほか多数の人が集まってお祝の儀式を行い、原告Aは被告の教祖文鮮明夫妻の写真を貰った。
● 三〇〇〇万円の献金後の経緯
 三〇〇〇万円の献金後、原告Aは、亡夫が残した保険金を亡夫が献金するよう求めるはずはなく、また、甲から土地を売り払って献金のために金策した人がいるとの話を聞いて、霊界の話は虚偽ではないかと疑い始め、三〇〇〇万円の献金をしたことを後悔したが、反面、献金したことを乙らから堅く口止めされていたために誰にも相談することができないまま右献金を納得しようと苦しんでいた。そのころ、原告Aは、時々、春日原道場に通っていたが、原告A宅には弥勒像を拝んだりお経をあげにやって来る者が頻繁に出入りするという状況であり、また、オアシス会のメンバーから一人娘を同会に連れてくるように言われたり、昭和六三年九月ころから会社勤めを始めると、天地正教の信者から会社を辞めて右道場に来るように求められたり、親子共々被告に入会するように言われ、さらには、高額の献金や金銭の貸付を求められるなどしたため、原告Aは、このまま右道場に通い続けては将来が不安であると考えて、平成元年一月以降は右道場へ行くのを一切やめた。そして、原告Aは、何かの機会に本件献金を返金して貰えないかと考え、何度か春日原道場の執事である石井某のほか、甲や乙に対して本件献金の領収書を要求したところ、平成元年四月ころ、右石井から原告A宛に被告福岡教会名義による額面三〇〇〇万円の領収書(甲第四号証)が手渡された。
 なお、原告Aは、平成元年八月ころ、右献金等の取戻しを弁護士に依頼し、その結果、絵画の代金二二万円については有限会社都美との間で平成二年五月三〇日に、五〇〇万円の献金については霊石愛好会との間で同年一月二五日に、弥勒像、念珠の代金合計五一三万円及び印鑑の代金二〇万円については株式会社東亜商事との間で同月一八日に、一八七万円の献金については天地正教との間で、それぞれ和解が成立し、損害回復がなされている。
 以上の事実が認められる。
 ところで、三〇〇〇万円の献金について、被告は、献金の要求をしたのは同日午前一〇時三〇分ころから午後一時ころまでの間であり、その間、遠藤が原告Aに対して同人が学んだ教理や文鮮明をメシアとして信ずるか否かを確認した上で同人の統一原理に対する理解と信仰心が十分であると判断し、献金の目的を説明して、幾度も原告Aに意思確認をした上で、予め原告Aの資産を考慮して決定ずみの金額三〇〇〇万円を提示し、献金の承諾を得たのであり、また、遠藤が献金を求めた際に同室したのは少なくとも徳永のみであり、遠藤は何度も席を立った事実、乙及び徳永が原告Aの両脇に座って原告Aの手を握り、「頑張って、頑張って」などと言った事実は存在しないから、原告Aは何時でも退室できる状態にあった旨主張し、右主張にそう乙第二号証の一及び二、証人乙及び同遠藤の各証言が存する。
 しかし、前記認定のように、原告Aに対して三〇〇〇万円の献金を要求する以前にも、被告の信者らは、原告Aの五〇〇万円の献金や七〇〇万円の出捐に際し、原告Aに対して先祖の因縁や亡夫の訴えを言って右献金等を要求しているのであるから、三〇〇〇万円の献金に際しても、遠藤らが同様のことを原告Aに言ったものと考えるのが合理的であること、突然に、しかも三〇〇〇万円もの極めて高額な献金を要求された者がこれに素直に応ずるというのは極めて考えがたく、その際に通常これに応じさせるための甘言や人を畏怖させる言動の存在が推認されるところ、この点に関する原告Aの供述は概ね一貫していること、後記認定のとおり、原告Aに二一〇万円の献金を要求した権藤の行為に関する原告Bの供述内容と、三〇〇〇万円の献金に関する原告Aの供述内容とは、先祖の因縁や亡夫の訴えを言って献金を要求する点で概ね一致していること、証人遠藤は、三〇〇〇万円の献金勧誘行為において、原告Aに対し、その家系図を示したり、先祖の霊が解放されるとか、霊界によって守られるなどと言ったことを自認しているものであるから、遠藤が先祖の因縁や死者の訴えを言って献金を要求したもの、ひいては、献金に応じない場合の害悪を告知して献金を要求したものと推認するのが自然であることなどの諸事情に照らして考えるならば、原告Aの供述するとおりの行為が行われたと見るのが合理的であり、これに反する右各証拠はすぐには採用することはできず、したがって、被告の右主張は、他にこれを認めるに足りる証拠はない以上、理由がない。
2 原告Bに対する行為
 原告B本人尋問の結果により真正に成立したと認められる甲第三、第七〇、第七二及び第七三号証、証人重富の証言により真正に成立したと認められる甲第八八及び第九九号証、弁論の全趣旨により真正に成立したと認められる甲第一〇〇号証の一ないし三、証人丙の証言、原告B本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば次の事実が認められ、ほかにこの認定を覆すに足りる証拠はない。
● 二一〇万円の献金に至る経緯
 被告の信者で被告に献身していた丙 は、昭和六三年一一月一七日、被告との関係を秘匿して、原告Bの勤務先を印鑑の訪問販売のために訪れ、当時原告Bが使用していた黒色の印鑑を見たり、原告Bの内縁の夫が同年三月に死亡したことなどの身上話を聞いたりした後、原告Bに対し、「黒は苦労につながります。幸運を招く印鑑があるから買い換えたほうがいいですよ。ご主人が亡くなったのもその印鑑を持っているせいだ」などと言って印鑑の購入を勧めた。そう言われて従前の印鑑を使い続けることに抵抗を感じた原告Bは、そのころ印鑑を買い換えようとも考えていたこともあって、丙の右勧めに応じて一二万円の印鑑三本セットを購入することとし、申込書にその旨記入してその場で内金五〇〇〇円を支払い、その翌日、丙に残代金を支払った。右残代金支払いの際、丙は、原告Bに対し、「運勢を見てくれる先生がいるけど見てもらいませんか」などと言って誘ったため、原告Bは、以前に運勢を見てもらった経験はなかったものの、内縁の夫が他界したことや自分自身も病気がちであったことから興味が湧き、丙の右誘いに応じて右先生に面会する日を同年一二月二四日と約束した。そして、右同日、原告Bは、自分の運勢を見てもらうために、丙に連れられて福岡市博多区博多駅東一丁目一三番所在の松岡ビル三階にあるひまわり会に行ったところ、重富から被告の信者で伊集という女性(以下「伊集」という。)を紹介された。伊集は、原告Bに対して運勢に関する話をした後に、「今、天の摂理が一番いい時期だから、来年から一緒に勉強してみません か」などと言って、ひまわり会に通い、勉強を始めるよう誘った。原告Bは、ひまわり会について、色々な境遇の人達が集まり、相談に乗ったり、話し合ったりする人生勉強をする場所であると考え、伊集の誘いに応ずることとして受講料一二万円を支払い、誘われるまま平成元年一月五日からほぼ週三回の割合で通い始め、教育トレーニングと称するひまわり会の会員などで構成する勉強会に出席した。そして、原告Bは、まず、精神修養のためのビデオから見始め、次第に聖書や被告の教祖文鮮明の路程などを内容とする宗教に関するものを見せられるようになり、その後に統一原理を説くビデオへと進んで行ったことから、同会が被告の狭義を教える所であり、被告が運営しているものであると認識するようになった。その際、原告Bは、ひまわり会において受講した講義の中で、この世にメシアが再臨され、そのメシアが文鮮明であることを教えられ、ひまわり会の会員からメシアの存在を明かされたことを祝福されたが、同会においてメシアの存在を明かされることの意義を理解できない状態であった。
● 二一〇万円の献金とその勧誘行為
 原告Bは、平成元年一月二七日午後六時三〇分ころ、丙から連絡を受けてひまわり会に赴くと、重富から同会の一角にある部屋へ案内され、同室において、占いの先生と呼ばれていた被告の信者である権藤を紹介された。そして、原告Bに対して、権藤が「あなたのことを見てあげるから先祖や家系のことを聞かせて欲しい」などと言って家系図の作成を求めたため、原告Bは、権藤に自分の身上話をし、自分の家系図と内縁の亡夫の家系図をそれぞれ作成して手渡した。すると、権藤は、その家系図を見ながら、原告Bが長い間妻子ある亡夫と内縁関係にあったことや亡夫が昭和六三年三月に早世したことについて、「あなたがそうなったのはあなたの母方のおばあちゃんの因縁です。あなたが先祖の因縁をすべて清算しないとあなた自身も天国へ行けないし、あなたの家系は誰も救われない」などと因縁を説いた上で、「因縁を清めるために財産をすべて投げ出しなさい。献金しなさい」などと言って献金を要求した。これを聞いた原告Bは、当初、半信半疑であったが、妻子ある亡夫と内縁関係を続けて来たこと、その内縁の夫に早世され、心細い気持ちで日々を過ごしていたこと、自分自身が病気がちであったことや不幸が続いたことなどを思い返し、それが先祖の因縁に起因すると考えると不安な気持ちに陥り、権藤に対し、「考えさせてください」と言って、献金をするか否かを考える猶予を求めた。これに対し、権藤は、「あなたがこの天の気持ちを断ればもうこの話はなくなります。一度断れば今後あなたが献金したいと言ってきても、もう決して受け付けません。そうするとあなたはもう救われないことになりますよ。それでもいいんですか。今ここで返事をしなさい」などと強い口調で即答を要求した。そして、権藤は、原告Bが献金額を尋ねると、「天は二一〇万円と言っている」と献金額を提示し、さらに、原告Bが右献金が高額であったためにすぐに金策することはできないと言うと、「すぐに作らなければ駄目です」などと言って原告Bの事情を聞き入れようとせず、直ちに献金を承諾するよう執拗に求めた。その結果、同日午後九時ころになって、遂に、原告Bは、二一〇万円で自分の家系が救われるのであればと諦めて、右献金を承諾した。その際、原告Bは、献金先について、権藤が何度も天の気持ちであるとか天への献金であるなどと言っているのを聞き、天とはメシアとされている文鮮明のことであるとひまわり会で教えられていたことから、献金は被告に対するものであると思っていた。そして、原告Bは、翌二八日、信用組合から三〇万円の払戻しを受けてこれをひまわり会で権藤に渡し、同月三〇日、同組合から残額一八〇万円を借り入れてひまわり会で権藤に渡したが、その際、権藤やひまわり会の会員から献金については他言しないように口止めされていた。
 なお、右献金額二一〇万円については、同月中旬ころには予め決定されており、重富はそのことを聞かされていた。
● 二一〇万円の献金後の経緯
● 原告Bは、前記二一〇万円の献金後も引き続きひまわり会に通っていたところ、同月三月二四日、権藤から同会に来るようにとの連絡を受けて同会に赴くと、さらに、同会の会員に博多駅裏にあるアパートふよう駅前ハイツ一一〇七号室に案内された。同所の広さ約六畳の部屋には権藤及び初対面の被告の信者である木下某(以下「木下」という。)の二人が原告Bの来訪を待っており、同室において、権藤は、原告Bに対し、「ご主人の生命保険金はいくら入りましたか」などと尋ねたため、再び金員の出捐を要求されるとは考えていなかった原告Bは、四〇〇万円くらいであると返答した。すると、権藤は、原告Bに対し、「あなたのご主人は癌で亡くなっています。癌は不浄の病気だから、そのお金を持っていると必ずあなたにも不幸が訪れます。そうならないためにはそのお金を清めることが必要です。そのお金を天に預けなさい。そうすれば天が清めてくれます」などと言って四〇〇万円の貸付をするよう要求した。また、木下も、原告Bに対し、「自分も貸して月々返済して貰っています。借用書も切るから」などと言って貸付を促したため、原告Bは、右要求を断れば不幸が訪れるなどと言われると断ることもできず、今回は保険金を献金するのではなく預けて清めるということであるし、借用書も発行されるということから、嫌々ながらではあったが、四〇〇万円を貸し付けることを承諾した。すると、権藤は、原告Bに対し、右保険金の払戻しを受けずにそれを担保にして四〇〇万円を借り入れて右貸付の資金とするように指示するとともに、右借入金を「三年間天に預けることにしました」などと述べた。そこで、原告Bは、同月二八日、保険会社から右保険金を担保にして四〇〇万円を借り入れ、同日夕刻、右ふよう駅前ハイツにおいてこれを権藤に渡し、それと引換えに被告の信者でひまわり会の会計を担当していた加茂清子名義の借用書を受け取った。その際、原告Bは、四〇〇万円の貸付先について、権藤が天に預けるなどと言っていたことなどから、被告に対する貸付であると考えていた。
● その後、原告Bは、貸し付けた金員を返済して貰いたいことや丙やひまわり会の会員が優しく接してくれることもあって、言われるままに、被告の福岡教会に月一度の礼拝に通う傍ら、ひまわり会に週二回の割合で同会に通い続けていたところ、ひまわり会の新しい会員を勧誘するよう求められたが、自分と同様に高額の献金をさせられることを危惧して勧誘は行わなかった。そして、同年七月二五日、教育トレーニングのスタッフで原告Bの担当であった有津は、原告Bに対し、中国の摂理のため、具体的には被告が中国で自動車工場を建設するための資金が必要であると説明して、「天のために何百万円か貸して欲しい」などと言って金員の貸付を依頼して来た。これに対して、原告Bは、またしても金員を要求してきたことに閉口し、金策はできないと言って貸付を拒んだが、有津から、「自分の家を担保に入れてお金を貸している」などと言われたため、その要求を断ると前記四〇〇万円の貸付金の返済を受けられなくなってしまうことや、断れば今度も不幸が訪れるなどと言われるのではないかと心配し、結局、一五〇万円を貸し付けることを承諾した。そして、原告Bは、同月二七日、信用組合から一五〇万円を借り入れ、これをひまわり会で有津に渡したが、その際、右貸付先については、被告であると考えていた。
● 丙は、平成元年一〇月二〇日ころ、原告B宅を訪ね、原告Bに対し、丙が被告の信者として被告の資金集めのためにいわゆる霊感商法に携わってきたこと、最近被告がひどいことをやっているのに気付き、被告をやめることにしたこと、原告Bの二一〇万円の献金は予め被告が献金をさせようと図ったものであり、迷惑を掛けたことなどについて話をして謝罪するとともに、原告Bが被告に深入りしないうちにひまわり会に通うのをやめるよう説得したので、この話を聞いた原告Bは、被告との関わりを断とうと決心して以後ひまわり会には通わなくなった。なお、原告Bが購入した印鑑については株式会社東亜商事との間で和解が成立して損害が回復されているほか、合計五五〇万円の貸金についても現在では全額返済されている。
 以上の事実が認められる。
二 被告の信者らによる前記献金勧誘行為の違法性の有無について
1 一般に、特定宗教の信者が存在の定かでない先祖の因縁や霊界等の話を述べて献金を勧誘する行為は、その要求が社会的にみても正当な目的に基づくものであり、かつ、その方法や結果が社会通念に照らして相当である限り、宗教法人の正当な宗教的活動の範囲内にあるものと認めるのが相当であって、何ら違法でないことはいうまでもない。しかし、これに反し、当該献金勧誘行為が右範囲を逸脱し、その目的が専ら献金等による利益獲得にあるなど不当な目的に基づいていた場合、あるいは先祖の因縁や霊界の話等をし、そのことによる害悪を告知するなどして殊更に相手方の不安をあおり、困惑に陥れるなどのような不相当な方法による場合には、もはや当該献金勧誘行為は、社会的に相当なものとはいい難く、民法が規定する不法行為との関連において違法の評価を受けるものといわなければならない。
2 そこで、まず、原告Aの三〇〇〇万円の献金についてみるに、前記(一の1の●ないし●)認定事実によれば、三〇〇〇万円の献金までに原告Aは、甲や永良らによって霊界のことや統一原理等を内容とするビデオを見せられたり、先祖の因縁を説き聞かされたりした上で五〇〇万円の献金や七〇〇万円の献金等をさせられるなど、既に因縁の話や霊界で亡夫が苦しんでいることがあたかも真実であるかのように原告Aに思わせる状況が作出され、原告Aもこれを真に受けていたものと認められること、このような状況に乗じて、被告の信者である遠藤らは、原告Aに対する教育予定を組み、予め把握していたものと思われる原告Aの所持する亡夫の生命保険金額に基づいて献金額を決定し、これを原告Aから献金させるべく、一〇日間の講習によって統一原理等を集中的に教育した後に原告Aをマンションの一室に呼び出していること、四畳半の比較的狭い個室において、約六時間余の長時間にわたり、遠藤が原告Aに対してその家系図を示すなどして再三強い口調で先祖の因縁や献金に応じなければ不幸が起こるなどと執拗に害悪を説き、乙や徳永が原告Aの両脇に座ってその手を握り、遠藤の話に呼応して献金を促すなどして原告Aを退去することもままならない、いわば軟禁状態といっても過言でない状況に置いて、原告Aの不安をあおり、原告Aを困惑に陥れて三〇〇〇万円の献金を承諾させ、さらに、その献金について、原告Aに対して口止めをしていたこと、そして、その結果、原告Aは、その取得した亡夫の生命保険金の大部分を出捐してしまったことが認められるのである。そうすると、被告の信者である遠藤らによる原告Aに対する三〇〇〇万円の献金行為は、たとえその行為が遠藤らにとって布教活動の一環として行われたものであったとしても、その目的、方法、結果において到底社会的に相当な行為であるということはできないことは明らかである。したがって、右献金勧誘行為は、遠藤らの共謀に基づくものとして、民法七〇九条に定める違法な行為といわなければならない。
3 次に、原告Bの二一〇万円の献金についてみるに、前記(一の2の●ないし●)認定事実によれば、原告Bは、ビデオにより被告の教義等の講習を受けた後、原告Bの他に丙と権藤のみが在室するひまわり会の個室内において、権藤から、身上話や悩み事を聞かれた後、その悩み事や内縁の夫の死亡が母方の祖母の因縁であるなどと存在の定かでない因縁や亡夫の訴えを強い口調で言われた上で、その因縁を清算するための献金が要求され、さらに直ちにその要求に応じなければ救われないなどと言われて長時間にわたる執拗な勧誘を受けたこと、その結果、直ちに献金に応じなければならないような状況に追い込まれて不安に駆られ、困惑に陥ったために、二一〇万円の多額な献金を承諾したこと、原告Bの献金額は、原告Aの場合と同様に予め決定されていたばかりでなく、その後も被告の信者らによる原告Bに対する金銭の出捐要求がされていること、権藤らは、原告Bに対し、原告Aの場合と同様にその献金について口止めをしていたことが認められる。そうすると、被告の信者である権藤らによる原告Bに対する二一〇万円の献金勧誘行為は、その目的、方法、結果において、原告Aに対する場合と同様に、到底社会的に相当な行為であるということはできない。したがって、右献金勧誘行為も、権藤らの共謀に基づくものとして、民法七〇九条に定める違法な行為といわなければならない。
三 被告の不法行為責任の有無について
1 非営利団体である宗教法人の信者が第三者に損害を与えた場合に、その信者が右宗教法人との間に被用者の地位にあると認められ、かつ、その加害行為が宗教法人の宗教的活動などの事業の執行につきなされたものであるときは、右宗教法人は、右信者の加害行為につき民法七一五条に定める使用者責任を負うものと解するのが相当である。なぜなら、宗教法人に民法七一五条の適用を排除する合理的な理由はなく、また、代表役員その他の代表者の行為による宗教法人の損害賠償責任を定めている宗教法人法一一条の規定も宗教法人につき民法七一五条の適用を排除するものとは解されないからである。
2 そこで、本件をみるに、前記(一の1の●ないし●及び2の●ないし●)認定事実に、成立に争いのない甲第一七号証の一及び三、第三一号証の一、証人重富の証言を総合すれば、次のような事実、すなわち、原告Aに対する三〇〇〇万円の献金勧誘に関与した乙、徳永及び遠藤、原告Bに対する二一〇万円の献金勧誘に関与した丙及び権藤は、いずれも被告の信者であるが、特に、徳永、遠藤及び丙は、いずれも被告の信者が統一原理を受け入れて身も心も被告に捧げるべく、仕事を辞め、家族から離れてホームと呼ばれる場所で他の信者と共同生活をするなどしながら被告のために活動を行う献身をしていた者であること、丙は、原告Bの二一〇万円の献金を勧誘した当時、被告の教義の内容を成す万物復帰といわれるものは、サタンに奪われた財産を神の側に取り戻すことを意味する教えであり、いわゆる霊感商法や被告への献金を求める行為はその教えに基づいた実践であると理解していたものであり、同じく被告に献身して印鑑の訪問販売などの活動をしていた被告の元信者である丁や戊も重富と同趣旨の理解をしていたこと、原告Aの三〇〇〇万円の献金は、乙を介して被告のもとに受け入れられており、その際、被告福岡教会において、教会長が礼を述べるとともに、献金の使途先として被告と関係がある事業の説明をし、被告の信者らによる祝福のための儀式が行われていることが認められ、さらに、原告Bの二一〇万円の献金に関与したものが被告の信者である丙や権藤であること、右献金場所が原告Bに対して被告の教義についての講義やその教祖文鮮明をメシアの再臨として教えたひまわり会であること、前記(一の2の●)認定における右献金の際の権藤の発言内容や原告Bの認識内容、さらには右献金について何ら反証を提出しようとしない被告の応訴態度からすると、原告Bの二一〇万円の献金も被告のもとに受け入れられたものと推認するのが相当であり、これらの認定を覆すに足りる証拠は何らない。そこで、右判示の事実からすると、原告らに対する献金勧誘行為を行った被告の信者らのうち、多くの者が被告に献身し、その指揮に従っていたものと認められるので、被告と右信者らとの間には実質的な指揮監督の関係があったものと認られ、したがって、右信者らは、民法七一五条に定める被告の被用者の地位にあるものと断ずるのが相当である。そして、次に、右信者らの献金勧誘行為について考えるに、そもそも右勧誘行為の対象は宗教的活動の場における献金であり、しかも、右判示のようにその帰属先は被告と認められるのであるから、被告の宗教的活動に密接に関連しているものといえるばかりでなく、右判示の事実によれば、献金勧誘行為そのものが被告の教義に基づく実践行為であると認められ、あまつさえ、原告Aに対しては被告の福岡教会において祝福の宗教的儀式も執り行われているのであるから、民法七一五条に定める被告の「事業の執行につき」という要件を十分に充足しているものと認めるのが相当である。そうすると、被告は、被告の信者らによる原告らに対する違法な献金勧誘行為について、民法七一五条に定める使用者責任を負っていることになるから、被告の民法七〇九条の責任の有無について判断するまでもなく、原告らに対し、右違法な献金勧誘行為によって原告らが被った損害を賠償しなければならない。
四 原告らの損害の有無について
1 経済的損害
 前記(一の1の●及び2の●)認定事実によれば、被告の信者らによる前記違法行為によって、原告Aはその献金相当額である三〇〇〇万円の損害を、また、原告Bはその献金相当額である二一〇万円の損害を被ったことが認められるので、被告は、原告Aに対して三〇〇〇万円を、原告Bに対して二一〇万円を、それぞれ賠償しなければならない。
2 慰謝料
 前記(一の1の●及び2の●)認定事実によれば、原告らは、いずれも被告の信者らによる前記違法行為によって多大な精神的損害を被ったものと認めるのが相当であるところ、前記(一の1の●ないし●及び2の●ないし●)認定の本件における一切の事情を考慮すれば、原告らが右違法行為によって被った精神的損害に対する慰謝料は、原告Aは一〇〇万円、原告Bは二〇万円とするのが相当である。
3 弁護士費用
 本件事案の性質、審理の経過及び認容額その他諸般の事情を斟酌すると、被告の信者らによる前記違法行為によって生じた損害として賠償を求め得る弁護士費用は、原告Aは四〇〇万円、原告Bは三〇万円とするのが相当である。
五 結 論
 以上によれば、原告Aの被告に対する本訴請求は、三五〇〇万円及びこれに対する昭和六三年六月二六日(原告Aに対する不法行為日である。)から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金を求める限度において、また、原告Bの被告に対する本訴請求は、二六〇万円及びこれに対する平成元年七月二七日(原告Bに対する不法行為日の後である。)から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金を求める限度において、それぞれ理由があるからこれを認容するが、その余の請求はいずれも失当として棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条、九三条を、仮執行宣言につき同法一九六条を適用して、主文のとおり判決する。

福岡地方裁判所第三民事部
裁判長裁判官 中 山 弘 幸
裁判官 鈴 木   博
裁判官西川知一郎は転補のため、署名押印できない。
裁判長裁判官 中 山 弘 幸