統一協会の現状 2005年3月1日
Moonies in Japan


全国霊感商法対策弁護士連絡会
〈目次〉
1.統一協会(統一教会)の概要
2.霊感商法の手口による資金集めや企業活動の実態
3.信者勧誘や献身者の生活管理の問題
4.合同結婚式や海外宣教の問題
5.政治家等への浸透
6.統一協会(統一教会)問題に取り組む団体


1.統一協会(統一教会)の概要
 世界基督教統一神霊協会(略称統一協会(統一教会))は1920年に今の北朝鮮で出生した文鮮明が1954年5月に韓国で創立しました。文鮮明は日本の高等学校で学んだ後、今の北朝鮮に帰省し、社会秩序を乱した罪で北朝鮮で1948年に実刑判決を受け、韓国に逃走した後にも同種事件で1955年にソウルで逮捕されています。多くの女性と性関係を持ったことが理由で、社会秩序を乱した罪にあたるとして再三逮捕拘留されたと言われています。

 文は1960年に現在の妻韓鶴子(1944年生れ)と三度目 の結婚をしました。韓鶴子との間には12人の子がいます。その 長男が文孝進(ムン・ヒョウジン)です。彼は信者の娘である洪蘭淑(ホン・ナンスク)と結婚しましたが、洪は孝進の虐待に耐えかねて逃げ離婚しました。1998年秋洪は In the Shadow of the Moons (日本では「わが父文鮮明」)という手記を書いています。この文孝進は麻薬、暴行などの非行が重なったため、文鮮明の後継候補は三男の文顕進(ムン・ヒョンジン)になりました。顕進の妻は文鮮明の右腕と言われる郭錠(カク・チョンハン)の娘です。

 韓国で始まった統一協会(統一教会)は、1958年に日本で布教を始めました。

 統一協会(統一教会)は、1961年に成立した朴政権に反共活動の面で利用されるようになり、63年に韓国で財団として認可され、64年に日本でも宗教法人として認証されました。それ以来、統一協会(統一教会)は、勝共連合の実質的母体として韓国や日本の反共政治組織に利用されました。1974年に、ウォーターゲイト事件で窮地に立つニクソン大統領を救うとして同大統領に文鮮明が会うことができてからは、米国でも様々な政治工作を展開してきました。1979年に米国議会で社会問題となったコリアゲート事件では、統一協会(統一教会)幹部の朴晋煕(パク・ポヒ)が米国の議会で証言を求められたこともあります。この朴は2003年末に詐欺罪で韓国で逮捕拘留中の身です。

 アメリカでは1982年に文鮮明が提唱して設立したWashingtonTimes 紙を中心に保守的言論界や政界(共和党)に一定の影響力をもっています。しかし、アメリカでは文鮮明とその手下の神山威(元日本統一協会(統一教会)会長)の2人が脱税で実刑判決を受け、1984年7月から1年余り刑務所に入っていました。

 韓国では、日本から送られる資金をもとに統一重工業や一信石 材、一和、世界日報などの企業を有し、財閥のひとつと言われていました。文鮮明は経済的な成功者と見なされていました。しかし、1997年からの韓国経済の破綻と日本の統一協会(統一教会)組織からの送金が減少したため、統一協会(統一教会)系の企業のほとんどが倒産してしまいました。この窮状を逃れるため、文鮮明の指示で大量の資金が日本から韓国統一協会(統一教会)系企業へ流れました。今では清平(チョンピョン)に大きな修練所を造る外、リゾート地龍平(ヨンピョン)の用地を買収するなど、金満ぶりが復活しています。

 日本では、1970年頃から目立った存在になり、1975年頃から大理石壺や人参液を霊感商法の手口で高額価格で売って潤沢な資金を手にするようになりました。1975年から約10年間余りにわたって、日本の統一協会(統一教会)は、文鮮明のもとに、毎月50ないし100億円の資金を送りつづけたと言われています。今でも、日本人信者は毎年100億円以上の資金を文鮮明に送りつづけています。

 この資金を使って文鮮明やその手下は、ソ連のゴルバチョフや北朝鮮の金日成、更には中国の要人と会っています。文は朝鮮半島の南北統一に寄与したいと述べていますが、本音は金日成のように国の支配者・帝王になりたかったのではないでしょうか。今では南米のブラジルのジャルジンに広大な土地を買って、そこに地上の楽園を造ると言っています。韓国や北朝鮮でも様々な利権をあさっています。これらの活動のために、日本人信者が酷使され資金が浪費されているのです。

2.日本での霊感商法による被害の実態
 まず、1997年9月18日の最高裁判決で、統一協会(統一教会)の法的責任が確定した事例を紹介しましょう。これは全国で発生している極めて典型的事例であり、我々日本の弁護士は同種の被害相談を多数担当してきました。

 1987年8月に夫が死去した46歳のA女は娘と2人で失意の生活をおくっていました。1988年2月、統一協会(統一教会)の信者Bは、戸別訪問をして知り合ったA女を、統一協会(統一教会)信者が運営している絵画展に誘い、担当信者らがしつこく勧めて22万円の絵画をA女に買わせました。BらはA女方に再三訪問してめったに会えないえらい先生に家系図を見てもらうよう勧め霊場に連れ出します。そこで霊能力があるという先生(実は信者C)が、「あなたの夫が地獄で苦しんであなたの救いを求めている。すべてを投げうって天にささげる気持ちで献金しないと娘も不幸になる」などと脅して長時間説得し、結局500万円を献金させます。BらはA女をその後もビデオセンターに通わせて、統一協会(統一教会)の教義を教え込み、霊界の恐怖をうえつけて、A女に弥勒像の代金として700万円、印鑑3本セットの代金20万円を支払わせました。その上で別の先生役の信者がA女を説得して、A女の夫の生命保険3000万円も「今こそ天にささげなければならない。夫も霊界でそれを望んでいる」などと述べて、献金させたのです。

 このような手口による資金集めは、日本では霊感商法と言われています。

 このように統一協会(統一教会)による金銭被害は一回で終わりません。まだ財産があるし、家族の悩みや将来の不安があると判ると(誰でもこのような悩みや不安は多少ともありますが)、しつこくつきまとってサロンのように作られているビデオセンターに通わせて、統一協会(統一教会)の教義と判らないように教義を教え込んでいくのです。こうして真理を学ばないと先祖の因縁から解放されず、家族や本人に不幸がおこると言われると、人の良いA女のような人は断われないのです。

 このような事件が今も新たに発生し、毎年多数の霊感商法の被害者が出ています。全国弁連の集計では、1987年から2004年までの18年間で、合計25,213件、被害合計額91,545,532,210円の被害相談がありました。この金額でもまだ全体の被害の氷山の一角でしかないと思われます。

 統一協会(統一教会)は万物復帰という、世の中の全ての財産は本来メシアである文鮮明に使ってもらうためにあるという教義があるので、どんなに社会的に批判されても霊感商法の手口による資金集めを止めません。しかも、日本はエバ国家として世界の統一協会(統一教会)組織を資金的、人的に支える義務があると教えられています。文鮮明は日本の市民を不幸にしても、自分の欲のためなら平気なのです。

3.信者勧誘や献身者の生活管理の問題
 日本の統一協会(統一教会)は信者が40万人いると言います。しかし、実際は信者Bのような睡眠時間以外の全ての時間を統一協会(統一教会)の指示通り伝道や資金集めの活動に費している者(これを献身者と称しています)が約5000人、Aのような家庭人や仕事をもって信者になっている人(勤労青年・壮年壮婦と称しています)が約15000人、そのシンパが1、2万人ほどではないでしょうか。

 最近では信者Bのような献身者が減り、仕事をもって毎月多額の献金をしている信者が増えています。主婦の信者を増やして金づるにしようとしています。

 勧誘活動の最大の問題は、統一協会(統一教会)いや宗教であることさえかくしてビデオセンターに通わせ、先祖の因縁や将来の不幸、霊界で永遠に地獄で苦しむなどの不安をあおってやめられなくしていく手口です。統一協会(統一教会)に反対する家族をサタンと決めつけて家庭を崩壊させ、24時間文鮮明のために働くロボットにしていくのです。
 勧誘の窓口は自己啓発センターだと嘘をついて市民を誘い込むビデオセンターが中心です。これが全国に数百ケ所あります。また、世界平和女性連合や世界平和統一家庭連合の外、天地正教という別の宗教法人、韓日人協会、野の花会、カトレア会など偽装の団体名での勧誘もします。PLA(Pure Love Alliance)、SFP(Service for Peace)などの名称で新純潔キャンペーンや自称ボランティアをして若者や主婦を引き付けようともしています。野の花会の名称で珍味やコーヒー、ハンカチなどを売り歩く活動も、ロボットを作り上げていく「修練」の一環なのです。

 信者Bのように、違法な資金集めであっても、地上天国実現のために正しいことをしていると思い込むようになってしまいます。ストイックなホームでの共同生活では、情報も感情も思考もコントロールされているので、文鮮明や先輩を疑うこと自体が罪だと考えるようになります。統一協会(統一教会)をやめると永遠に地獄で苦しむことになるし、先祖や子孫を不幸にすると思い込んでいるので統一協会(統一教会)をやめられません。

 裁判になったA女の加害者側になった信者Bも、ある意味では統一協会(統一教会)によるマインドコントロールの被害者です。典型例を紹介しましょう。

 D女は25歳の看護婦でした。毎日が忙しく、心に満たされないものを感じていました。アパートに帰ってもテレビを相手に一人で寂しい夕食の毎日。駅頭で青年の意識アンケートに答えたのがきっかけでビデオセンターに通い始めたのです。聖書の話が出てきましたが、スタッフは「宗教とは関係ない」「人生について勉強するところ」と話していました。スタッフに励まされて通ううちにそこが悪名高い統一協会(統一教会)の勧誘施設と知った時には、「でも皆まじめで親切だし、うそを説明しているのでもないから、もうすこし通ってみよう」と考えるようになっていました。日本の若者は宗教についての教育をほとんど受けていませんし、ふだん触れる機会もないので、その教義の矛盾や聖書のごまかしに気付きにくいのです。D女は、毎日帰宅が遅くなり、職場を休むことも増え、献身を勧められて、当然のように退職し、信者が共に住むホームに転入しました。献身前には統一協会(統一教会)のためにサラリーローンから多額の借金をし、退職金も全て統一協会(統一教会)に献金しました。アパートの家財道具も全てホームに寄付しました。D女の両親が心配して連れ戻すのを防ぐため、D女はホームを移り住みつつ、毎日物品販売や伝道(ビデオセンターへの誘い込み)に睡眠時間をおしんで奔走しています。それが地獄に行って苦しまず、メシアによって救われる唯一の方法だと信じ込まされているのです。毎月15000円の小遣いをもらうだけですし、休日は月に1日だけ。D女は、合同結婚式に参加して真のメシア文鮮明(お父さまと呼んでいます)が選んでくれた男性と理想の家庭をつくること、そして地上天国をつくることを夢見ています。

4.合同結婚式や海外宣教の問題
 統一協会(統一教会)は、92年8月、95年8月、97年からは毎年と頻繁に合同結婚式をしています。日本人の参加者は参加する度に1人140万円の献金と30万円の経費を出すように指示されます。2000年より2004年まで4億組(第1次から第5次)の男女が参加したと宣伝していますが誰も信じていません。むしろ実際の参加者は減っているようです。しかし、参加者の献金は貴重な収入源ですし、合同結婚式の派手なイベントは勢力誇示の機会です。

 信者たちは、原罪をかかえた自分が唯一救われる方法がメシアである文鮮明の祝福を受けて、メシアが選んだ異性と家庭を持って子をつくることと信じ込まされています。その参加のために伝道や資金集めに努力し、参加後も統一協会(統一教会)の指示通り活動します。

 合同結婚式に参加しても、統一協会(統一教会)が認めるまで入籍させませんし、SEXもさせません。勿論家庭ももたせません。

 このような合同結婚式では、本当に自分の意思で相手を選び本当に結婚をしたとは言えません。

 最高裁判所は1996年4月25日、合同結婚式に参加して入籍した後脱会した日本人女性と日本人男性信者の結婚は有効な結婚だとは認められないと判決しました。入籍した後脱会した元信者による婚姻無効の確認を求める裁判は、これまで約50件程がその主張通り認められています。

 2002年8月21日の東京地裁判決は、信者は事実上合同結婚式への参加を強要されているから婚姻の自由を侵害していると認定し、元信者の損害賠償請求を認めました。この判決は最高裁決定で確定しています。

 多くの日本人女性信者が今でも世界各国に派遣されて伝道活動をしています。世界平和女性連合のボランティアだと正体を偽って市民に近づき、合同結婚式への参加者を募っているのです。日本の女性信者の家庭では、幼い子が老祖父母や夫の手に委ねられ、寂しい思いをしています。

 韓国人男性と結婚させられ、韓国人の妻として韓国内で生活している日本人女性信者が約5000人もいます。そのうち相当数が夫の虐待や無理解に苦しみつつ、信仰と現実のギャップに苦しんでいます。しかし、信仰でしばられているしお金もないので、日本に帰ることもできないでいます。

5.政治家等への浸透
 統一協会(統一教会)の問題のひとつは、政治家や言論界への浸透です。日本の保守的な政治家の選挙を手伝ったり、資金援助をしてきました。あまりに悪名が高いので表向き統一協会(統一教会)に協力する政治家は少ないのですが、高村外務大臣はかつて統一協会(統一教会)の資金援助や選挙応援をうけていました。中曽根元首相もそうです。平沼赳夫氏もそうでした。

 日刊紙世界日報は日本ではそれほどではありませんが、韓国ではまだ一定の影響力があります。金大中大統領も1989年2月の世界日報のパーティーに出席して挨拶しました。アメリカのワシントン・タイムズは統一教会の資金で運営されているタカ派の新聞です。

 アメリカのブッシュ前大統領は、世界平和女性連合が統一協会(統一教会)のダミー団体だと知りながら、日本の集会で講演したり、アメリカに来た信者たちに挨拶しています。息子が Washington Times の応援を受けて大統領になることを希望したのでしょうか。ブッシュU世はそのブレーンにも統一協会(統一教会)信者をかかえていると報じられています。
 その外カナダのマルルーニ前首相やインドネシアのワヒド元大統領など、引退した元政治家や二流の文化人、言論人が時々統一協会(統一教会)の宣伝塔になります。

6.統一協会(統一教会)問題に取り組む団体
 全国霊感商法対策弁護士連絡会は、1987年5月に全国約300名の弁護士で結成されました。霊感商法の被害者救済と根絶のために活動しています。現在でも全国の被害者のために合計約20億円の損害賠償請求をしています。当然信者たちの家族とも協力しています。

 統一協会(統一教会)がキリスト教の一派と名乗っていることもあって、全国約200名の牧師などの宗教家やボランティアが、信者やその家族の相談を受けています。信者の脱会カウンセリングを犠牲的なボランティアで担当してくれている牧師たちも全国にいます。

 信者の家族たちも2003年11月、全国統一協会被害者家族の会を設立し、電話相談、インターネットでの情報提供などの活動を始めました。この外、各地に小グループがあります。元信者の集まりもありますが全国的な組織にはなっていません。

 これらの団体が協力しあってマインドコントロールの問題や破壊的カルトの危険性を日本社会に訴えてきました。オウム真理教による地下鉄サリン事件の時にも、これらの団体の活動があったので、不十分ですが一般社会の理解も深まりました。

 しかし、日本には多くの破壊的カルトや宗教の名をかたる悪質な金集め集団が次々と生まれています。日本社会特に政治や行政、マスコミの対応も遅れています。

 破壊的カルトの問題をより広く理解されるよう、また適切な対応がされるよう、世界各地の皆さんと協力していきたいと思っています。